桜花

七人の侍の桜花のネタバレレビュー・内容・結末

七人の侍(1954年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

戦に敗れて故郷を失い、浪人となった勘兵衛と侍を自称する菊千代。
侍として勝利を果たし、何かを守るということを成したい彼らは1人また1人と斃れていき、残った者が仲間の墓前で噛み締める勝利の味は喪失感と虚脱感。
農民たちは喉元過ぎれば何とやらで、平和を謳歌し、もう楽しそうに田植えをしている。
「勝ったのはわし達ではない。あの百姓たちだ」
辛い過去を引きずる繊細さは強さの源だが、忘れる鈍感さは(少なくとも当面の)幸せの源である。
侍たちが持っていた硬質で鋼鉄に似た強さに対する、百姓たちの仲間の死さえ水のように飲み込む強さ。勘兵衛はそれに感嘆しているのか虚しさを感じているのか...。
百姓の家の出身である菊千代が仲間の死を悼み、それに殉じるこころを持っていたとするならば、この一つのミーハー気質は日本の被支配者層がもっている空気により醸成されるものなのかもしれない。
武士道の理想と日本の現実の対比が見事な不朽の名作。
桜花

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