ケンシューイ

七人の侍のケンシューイのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
4.7
キャラクター設定について。
個人ではなくて、組織で戦っていくことの面白さ。

アクション映画としてド派手に規格外のことをやってる面や、時代劇として伝えられる百姓と侍の身分の違い、それから志乃と勝四郎の恋物語など複合的な魅力の詰まった大作だけれど、一番興味を持って何度も観てられるのは、絶対的なリーダー島田勘兵衛を中心に適材適所の個性的なキャラクターが集まり、一つのチームとしてまとまっていく姿が、今も昔も変わらず社会で生きていくことに通じているから。

トップの勘兵衛(社長)、No.2の五郎兵衛(部長)、No.3の七郎次(課長)の管理職系の中で面白いのは、3番目の七郎次の存在。自分が知恵を出すことよりも、上司の命令に従順であり、全体で決められた約束事を部下に浸透させていく、会社によく居そうな中間管理職タイプ。ただし大事なのは、悪い奴じゃないということと、この人が最後どうなったかということ。
戦闘の最前線で活躍する久蔵と菊千代との違い、それからそれを最後列で見つめる勝四郎という対比も面白い。エースの久蔵は個人戦術でも切り込んでいけるが、組織連携を理解していてチームの和を乱すことがない。ストイックで男の中の男といった感じで、勝四郎がわかりやすく惚れてしまうのも頷ける。それに対して粗野で暴れん坊の菊千代は、個人判断をして結果として皆んなに迷惑をかけてしまうような存在。でも異端児である彼は、侍の精神とは別の、百姓たちの気持ちがわかる代弁者でもあるから、やはりこの物語におけるキーマンだし、組織の中では境界線を越えていける貴重な存在。それとルーキーの勝四郎が、百姓の娘と恋をすることにも意味を感じる。
映画的には最も地味だけど注目すべき存在に思えたのはムードメーカーの平八。剣の腕はイマイチだけど性格が明るくて、チームが苦しいときに助けになるような存在。こういう人ってやっぱり重要なんだなって思うけど、最近どんどん少なくなってきてるような気がする。

色とりどりの個性が集まって、みんなで一つの目標達成に向かう。でも実際のところ、現実はそんなに簡単にはうまくいかないから、せめて映画の中だけでも気持ちをスカッとさせて、また明日から頑張ろうとパワーをもらってる。勉強になります。