MURANO

白いリボンのMURANOのレビュー・感想・評価

白いリボン(2009年製作の映画)
4.2
何も起こっていないようでじわじわと心に恐怖感を植え付けていく、とても怖い映画。

静かなモノクロ映像が効果的で、その影響もあってかすでに古典映画のような出で立ちです。

ミヒャエル・ハネケ監督は自らの体験の中に、「過剰の束縛」へのトラウマでも抱えているのでしょうか。

『ピアニスト』における母親の束縛によって生まれた主人公の愛情表現の歪みも、本作で描かれる厳格な宗教的な束縛から生まれた子どもたちの歪みも、悲劇の根源として物語を大きく支配しているものに思える。

子どもたちの純潔の象徴として巻き付けられた「白いリボン」も、結果としては皮肉にも束縛の象徴としてのその印象を強く残していました。

きわめて間接的な描写が多いが、その間接的な描写がじわじわと小さな村という共同体を蝕んでいっている感触を強める。

事件の場面にしても、視覚的に際どいシーンは多くない。なのに、静寂なモノクロ映像がとてつもなく恐ろしく感じられます。

一見、大きな出来事は起こっていないように思えるのが、逆に恐怖なのです。

まったく直接は関係ないのだが、ジャン・コクトーの『恐るべき子供たち』という古典のタイトルがふと頭に浮かびました…。
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