フラハティ

白いリボンのフラハティのレビュー・感想・評価

白いリボン(2009年製作の映画)
4.1
一本の針金が全ての始まりだった。


「おそらくあの出来事が当時の我が国そのもの」
1913年、第一次世界大戦前年。
ある村で謎の事件が発生。
針金により、村にたった一人のドクターが大ケガを負った。


閉鎖的な村の中で巻き起こる憎悪。
爵位という階級社会。
村を牛耳るのは、権力だけが誇りの男爵。
全て神の思し召しと語る牧師。
村でたった一人のドクター。

ドイツの国柄(ファシズム)を暗に提示しながら、大人という存在が子どもにどのような影響を与えているのかを"白いリボン"という象徴を加えながら、淡々と描く。
悪意の塊のような欺瞞だらけの大人。
子どもらしさがあまりにも欠落した子ども。
虐げられる女性。

人間の本質といったものを形成するのは、幼少期などが大きい。
つまりは、思想の芽生えや自己形成の一端として非常に大きな役割を果たすのは教育であり、大人たちの価値観。
ファシズムの始まりは、実は小さな村であったかもしれない。
本作の舞台である村よりも、もっと遥か昔から続いていたのかもしれない。
欺瞞の連鎖は一体いつから始まったのか。


大人=人格者という不思議な構図は、狭い世界であればあるほど正当化される。
どうすれば生きていけるんだろうか?
どうにか生きようとする子どもたちの姿は何とも胸が痛む。
ファシズムが生まれたのは、人間の本来持っている残酷さなのだろうか?
それとも、歪んだ正義が生んだ社会からの反抗なのだろうか?

形式的なミステリーとして観客を画面に釘付けにさせ、表面的な部分だけでは見えてこない、人間そのものの本質をえぐりだす。
『ピアニスト』よりもより抑圧され、『隠された記憶』よりもより潜在的な記憶。

"白いリボン"が象徴するように、多くの子どもが存在するこの村。
純潔、誠実…といった子どもたちを表したかのような純白。
"白いリボン"がいつしか黒に染まっていく。
「ここを支配しているのは、悪意や嫉妬、無関心や暴力。」
フラハティ

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