エディ

早春のエディのレビュー・感想・評価

早春(1956年製作の映画)
4.0
浮気発覚で危機が訪れた倦怠期の夫婦を描いた小津作品。妻昌子の機微が上手く描かれていないのが不満だけど、男同士の会話、女同士の会話にリアリティを感じるので今も共感できる映画になっている。
結婚8年目の杉山は蒲田から大手町に通うサラリーマンで、同じ通勤電車で通う同年代の男女たちと仲良しグループが出来ていて、ちょくちょく飲みに行ったりハイキングにいっていた。ある日、妻昌子が実家の家業の手伝いで不在のとき、仲間たちと江ノ島にハイキングに行ったときに、仲間の一人である千代と急接近し、以降二人で会うようになりとうとう一夜を共にしてしまう。
腰の軽い千代は杉山に熱を上げるが、杉山は倦怠期とはいえ妻を裏切った後悔で千代と距離を置くようになる。そんな不自然な関係に仲間達だけでなく昌子も気付き、昌子は実家に帰ってしまう中、地方異動の辞令が出た。。。

穏やかで普通に幸せな家庭を描くことが多い小津の作品は、あまりにも平和なので、今の時代では浮世離れしているようなのんびりした時間が漂っているが、この映画は今の時代でも通用するくらいにリアリティを感じる。それは、会社でもまれていく男の悲哀や、女同士の楽しみなどの会話に時代を超えたリアリティを感じるからだ。千代が孤立していくサマ、会社の冷酷さを感じさせ、家庭をないがしろにしてはいけないという仲間達が杉山に向けたアドバイスなどは胸に来る。三井の大番頭の晩年の話、仲人の会社観や人生観はまるで自分に聞かせてくれているような気になった。

なので、ストーリーはよく理解でき体にしみこんでいくのだが、一点残念なのは、妻昌子の心情が理解できないこと。演じた淡島千景に問題があるというより演出のせいだろうが、夫が離れていく寂しさやばれないと思って好き勝手をしている怒りに揺れる心の動きが感じられないのだ。常にさっぱりあっさりしているだけで、怒りや哀しみ寂しさ、甘えなどを感じることができない。

なので、ラストも唐突に感じてしまう。杉山の言葉や態度はひとつひとつ頷けたが、彼女がなぜそこに至ったかが判らない。
昌子よりは遊び人の千代を演じた岸恵子のほうが役にはまった魅力ある演技をしていると思う。

ただ、平和な家庭のちょっとした機微を描く他の作品よりこの映画は判り易い。