DZ015

僕と未来とブエノスアイレスのDZ015のレビュー・感想・評価

3.5
ブエノスアイレスのユダヤ人商店街「ガレリア」を舞台に繰り広げられる群像劇。中心となるのは母親が営むランジェリーショップを一応手伝ってはいるもののほとんどニートな青年アリエル。彼が生まれてすぐに戦争へと旅立った父親との30年ぶりの再会が物語りのハイライトではあるものの「ガレリア」という小さな世界に生きる、だらしないけどどこか愛おしい人々の生活を中心に描く。

閉塞感に満ちた商店街と、ポーランド移住を夢見ながら退屈な日々を送るアリエルがシンクロ。ドキュメンタリーを思わせる手持ちカメラのぶれが雑然とした街並みとよくマッチし、この作品を更に味わい深いものにしています。雑貨屋を営む兄ジョセフのおバカキャラとクールなアリエルの対比も面白い。

父親との再会も特に感動的に描くわけではないのだけど、その分母子を捨てて出て行った本当の理由を知ったアリエルが徐々に父親を受け入れていくシーンが静かな感動を誘います。戦争で右腕を失った父親の煙草に火をつけてあげるシーンなどぐっと来る。

そしてぐっとで済まないのがラストシーン。ネタバレはしませんがこれは相当好きなラストシーンとなりました。そしてその後、悲しみのあまり忘れていた「歌」を取り戻したおばあちゃんが生き生きと歌うエンドロールがこれまた素晴らしく(歌も素晴らしい)素敵な余韻を残してくれるんです。

地味ながら家族を中心とした人との繋がり、関わりを改めて考えさせてくれる素晴らしい作品でした。
DZ015

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