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詩人の血のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

詩人の血(1930年製作の映画)
3.7
ジャン・コクトーの映画デビュー作で、死をイメージした実験的な詩の映像。ストーリーはあるようでない。父親が拳銃で自殺していることからか、そのモチーフが主におかれていると感じました。銃で撃った人物は死なず甦り、子どもが硬い雪玉を投げられ亡くなる。父親の死に囚われ、父親はコクトーの中で何度も死んでは生き返り生き続け、子どものコクトーは心が死んでしまった。そんなイメージをもちました。白い大理石の女性の彫像は、母親なのか、あるいは噂好きな女性なのか、憎むべき対象と描かれているみたいでした。主人公の画家はこの女性像に操られていて、子どもは亡くなっても見向きもされない。女性像に冷たさを感じました。

鏡が異世界への入り口となり、その後「オルフェ」でも同じように鏡が使われていました。未見ですが(予告編で観た)「恐るべき子どもたち」の雪合戦のシーンと近いシーンがあり、コクトーの映画デビュー作にはその後の作品の元になるものが詰まっていました。

鏡が異世界の入り口になることと、「詩人の血」のタイトルに、自身を鏡に映したとき、父親の面影や父親から受け継いだ血を鏡の中の自分に投影させ、鏡の中に入るとは、父親に近づくことを表していたのではないかと感じます。

男性の上半身裸の肉体が強調されたり両性具有とかあるのですが、私にはあまりエロチックな感じはしなくて、ギリシャ神話の彫像にあるような、神話的な世界を表しているように思いました。世俗的なことや、個人的な悲劇を一般化、さらには神話化させ昇華しようとしたのではないかと。


マルチ芸術家のコクトーの詩はまだ読んだことがなくて、気になっています。
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