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イップ・マン 葉問のyksijokiのレビュー・感想・評価

イップ・マン 葉問(2010年製作の映画)
4.2
1作目であるイップ・マン序章はすごくシビアで暗めのストーリーで日中戦争での日本統治下の中国が舞台だっただけにかなり日本人が悪く描かれていた。誇大表現はあるにせよ大枠あってるんだろうというところもあり、正直辛かった。打って変わって今作は非常にエンタメ性が高く、純粋にアクションムービーとして楽しめたところが非常に良かった。

メイキングでドニー・イェンもサモ・ハン・キンポーも「アクションはストーリーを理解した上でそれに沿って考えるだけ」みたいなことを言っていて、確かにそこがきちんと共通理解になっているからこの映画のアクションシーンはこんなにも楽しめるんだなと思った。決して派手すぎず、でもきちんと場面に応じたアクションが練られているからどのシーンも全く退屈しなかった。

前作から一貫しているのは詠春拳をはじめとした中国武術が前作なら空手、今作はボクシング(西洋武術)と腕を競い合うという側面。個人的な地位や名誉でなく中国拳法への「誇り」がここに入ってくることで感情を揺さぶられる対決シーンになっていると思う。

ドニー・イェン演じるイップ・マンの武術は最高に最強で、詠春拳が「守りながら攻める」武術であることの特徴を生かして戦っている。どのシーンもとても見応えがあるし、カメラワークも素晴らしい。1でもすごかったイップマンの高速攻撃は今作も健在。ボクシングとの異種格闘シーンも手に汗握る熱戦で、迫力ありスピード感あり重量感ありで文句なく素晴らしかった。サモ・ハンの戦いも魅せる武術といった感じがしていい味出してたなー。

魚市場でのノコギリと大きな蓋を使った格闘シーンも詠春拳の魅力と強さが詰まっていた。好きだったのは武館を開くために師匠たちと戦うシーン。不安定な丸机の周りを木でできた椅子をひっくり返したもので囲って、その丸机の上で勝負(落ちたら負け)という限られた空間の中での戦いがすごく印象的だった。普通ならアクションの魅力が半減する状況で不安定さや周りの椅子をうまく使ってとても面白い対決になっていた。詠春拳と他の流派との戦い方の違いもうまく出ていてこれだけ2時間やっても全然見飽きないレベル。

物語の側面では静かに見守る奥さんの愛とイップ・マンの人柄が前作よりきちんと描かれていて、そこがストーリーに深みをもたらせていた。特に奥さんが静かに、決して反論することなく、ただ彼の身を案じる姿はすごく良かった。

演出的にやりすぎでは…?というところは勿論あるんだけれどもそんなことは抜きにしてアクションシーンが全部面白い。起きていることが観客にきちんと伝わる撮り方だし、シーンごとにそれぞれ個性がある。ストーリーも面白いしきちんとメッセージ性もあって、筋が一本通っていて…。と正直文句のつけようがなく面白かった。
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