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獣人雪男のHKのレビュー・感想・評価

獣人雪男(1955年製作の映画)
3.0
『さらばラバウル』『ゴジラ』などの本多猪四郎監督による日本映画。キャストは宝田明、河内桃子、笠原健司などなど

日本アルプスで大学の山岳部のメンバーのうち、何人かが遭難してしまう。遭難者を救出するため、有志の人たちと共に冬の山の中を捜索し始めるのだが、なんと遭難者を捕まえていたのは、幻の雪男であった。救助隊を追っていたブローカー達のせいで事態はとんでもないことになる。

オープニングのスタッフロールの監督助手に岡本喜八がいる。

個人的な感想としては大した作品じゃなかったのかなという印象がどうしても残ってしまう。映画も特に山岳隊の人たちの仲間割れとかに置かれたり、山でテントを張っている所はどう考えても間延びしているように見えてしまう。

雪男の造形はただ怖くする存在ではなく、様々な考証を参照しながら実在性や現実性を尊重した造形になっている。ゴジラのような存在感があるわけでもなく、登場シークエンスもひょっこり出てくるためにどうしても地味な印象が残る。

動物的なリアリズムは残る。子供らしい存在がいるが、ブローカーたちとトラックで激闘を繰り広げているうちに子供が猟銃で銃殺されてしまう。結構可愛かったのに可哀想に。

映画は劇中で登場する部落描写が差別的であるとして、VHSにもDVDにも出来ないということ。いざ見てみると、そこまででもないような気がする。これくらいの部族描写なんて、東宝じゃ東南アジアとかの描写でも普通にやっているから別に大したことないと思ったんだけど。

しかし、監督である本多猪四郎さんの美学というか、本多猪四郎イズムというのはこの映画からも感じ取ることが出来る。

KOMでも言いましたけど本多猪四郎イズムとは『人間が罪的な行動をする。→その罪悪感を表す存在として怪獣が暴れまわる。→最後にその人間が罪滅ぼしの為にその怪獣や怪人と心中する。』という構成。この映画もその法則に基づいている。

この映画も最後は本当に心中で終わってしまうのですが、こういう伝統的な本多猪四郎映画における終わり方も見事ではあると思った。

部落にいる紅一点の娘が一番可愛らしい。ああいう野性味がある人がいるのもとても良いと思いましたよ。

いずれにしても見れて良かったと思います。
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