こんなに泣いたのは久しぶりだった。。
何度か観ているつもりだったけれど、きっと断片的にしか観れていない。
いや、観れなかった…というのが本当かな。
選べなかった未来。
それを直視できるようになったのは、この歳になったからなのかな。
マイケルとキャロリンは、母フランチェスカ・ジョンソンの死に際して、彼女の遺言を読むうちに、昔々の母の知られざる長い長い物語に触れるのだった。
その物語とは、、
アメリカ、アイオワ州の片田舎に住むフランチェスカ(メリル・ストリープ)は、夫リチャード(ジム・ヘイニー)とティーンの息子マイケルと娘キャロリンの4人家族。細々と家族で農場を経営している。
ある時、離れた町で牧場のフェスがあるというので、フランチェスカ以外の家族は4日間家を留守にすることに。
その留守中にフランチェスカの目の前に現れたのは、ロバート・キンケイドと名乗るカメラマン(クリント・イーストウッド)。近くのローズマンブリッジを撮りに来たという。
道に迷って困っている彼を、フランチェスカは自ら車に乗り込み案内するのだが…。
何故、フランチェスカは家族と一緒に行かなかったのか?
ロバートは礼儀正しくかつフランクだけれど、彼と出会ってからの彼女の行動は、ちょっと軽率な感じもして、何となくザワザワする。途中からイヤリングをつけてきたりして、誘ってるの?
さも、ありがちな導入だなぁ、、と思っていたのだけれど。。
その後、フランチェスカがイタリア出身だということ、イタリアで軍人だったアメリカ人の夫と知り合い、ここに嫁いで来たこと、昔は教師をしていて、本当は仕事がしたいけれど夫が嫌がるからしていないこと、ロバートがふと口にした詩の一節、「月の銀のリンゴ 太陽の金のリンゴ」を彼女が"イエーツのさまよえるアンガスの歌 "と言い当てるシーン、花束→毒草を笑い合うシーン、ジャズに合わせて店で踊るシーン、、を経て、彼女は家族のことは愛しているが、ここでの生活には満足していないことが窺い知れる。
町の人も基本的にはいい人達だけれど、保守的で排他的な気風にフランチェスカはどこか馴染みきれない。
しかし、外から来たロバートには何でも話せてしまうのだった。。
要するに、私を連れ去って!状態。
でも、それは家族が戻るまでの4日間のアバンチュール、、のはずだった。
短い期間に、激しく求め合い愛し合う二人。乾いた砂漠のようなフランチェスカの心や体を、ロバートは溢れんばかりの水のように優しく満たしていく。。
誰も止められないほどに燃え上がり、遂に
二人でこの街を出ていこうというところまで発展するのだったが。。
いざとなると、怖気付くフランチェスカに
ロバートは"自分にとっては最初で最後の恋だ"と言い置いて、彼女の判断を待つ。
(別れの朝に、混乱してイラつくフランチェスカが印象的)
その後家族が戻り、何もなかったように日常が始まるのだが、雨の中グローサリーショップへと夫と出掛けた先に、まさかの濡れネズミになったロバートの姿が!!
名残惜しげにバックミラーにフランチェスカにもらったメダルをつけてアピールするも、結局車のドアに手をかけながらもそのドアを開けることなく泣き崩れるフランチェスカ。。
もう!ずるいやん!
悲しいし辛いけど、フランチェスカは帰る場所あるよ?
ロバートは一人ぼっちやん!
ここで涙腺が崩壊、嗚咽。。
やっぱりな、仕方ない。
訝しげな夫だが、彼は気付いていなかったのだろうか?
カメラマンの車だとわかっていたから、もしかして薄々気付いていたかも。
ここからが、他の作品と一線を画す所。
月日が流れ、甲斐甲斐しく身の回りの世話をするフランチェスカに病床の夫リチャードが言う "お前の好きにさせてやれなかった。悪かった。愛しているよ。"というセリフ。
切ない。。
ここでの暮らしが、フランチェスカにとってどうだったのか、夫はわかっていたのだろう。それでも寄り添ってくれたフランチェスカへの感謝の思い。
素晴らしい夫だと思った。
"リチャードは私がいなくなるという現実にきっと耐えられない、、"と泣くあの日のフランチェスカが蘇る。
夫を看取ってからロバートを探すも、居場所がわからず諦めていた3年後、ロバートの弁護士から彼の遺品が届く。
もう、、ここもあかん!!
彼女があげたメダル、彼女が書いて橋に貼ったメモ、そして彼女が作ればいいのに、と言った写真集。。
愛で溢れてる!!!
そして、ロバートの遺灰がローズマンブリッジに撒かれたことを知ったフランチェスカは、火葬にして自分も同じ場所に撒いてほしいと願うのだった。。
最初は、母を誘惑した変態カメラマン!とロバートに対して敵意を剥き出しだったマイケルをキャロリンがなだめ、二人で母の物語を辿るうちに、愛とは何か?深く考えるに至り、自分たちがパートナーとうまくいってなかった原因に気づき、それぞれのパートナーに謝罪してやり直そうとする。
これこそが、今作の肝なのではないだろうか。
正しい、とか正しくない、とか墓まで持っていくべき、とか言う人はいるけれど、ジャッジはしたくない。
ただ、私はフランチェスカとロバート、そしてリチャードの、自分の気持ちだけでなく人を大切に思う大きな愛に、本当に心を揺り動かされた。。
少し前に観た、"灼熱の魂"でも思ったけれど、真実を前にした時、子ども達はきちんとそれを受け止め、素直になれるんだと思う。(息子と娘だったからかもしれない。息子だけならどうだったかな。。)
何かを隠して平穏に済ませることが、残された者たちへの愛情なのか?
何かを伝えようとする時、人は命懸けである。
一か八か。信じて預ける時、その真摯な思いは伝わる。
やはり、そう感じた。
**クリント・イーストウッドとメリル・ストリープの恋愛物、ある意味とても意外だった♪ 私は好きだなぁ〜
息子のカイル・イーストウッドはクレジットされているけれど、役名がわからず。
知っている方、いるかな?