何気ない高校生の数日が描かれ、大して衝撃があるわけでもなく意外性のある展開が起こるわけでもないのに見終わった後なぜか余韻が残る作品だった。文学的に作られていて直接的に伝えるということをしていなかったが同じ系統（文学的）の他作品に比べれば”高校生”を経験したからか分かりやすかった。何気ない一日一日が高校生にとっては勝負の日で序列が定まっていく。登場人物は高校には必ず一人は居そうな存在が集まっているため様々な視点から映画に入り込めると思う。
主人公の前田や野球部のキャプテン、桐島は自分のやりたいことを全力でやっている。だからこそ自分がどこまでの存在なのか限界を知っている。菊池などは学校で周りの視線を気にして自分のやりたいことをせず、ランクの高い生徒として格好をつけている。そうすることを踏まえて前田と菊池の会話を見ると高校の生き方の全てが詰められてるような気がして感情がかなり昂った。前田と東原の関係性を考えながら見るのも面白い。前田と東原の会話から二人は同じ中学校でその時は何気なく会話を交わす仲あるいは位が同程度のクラスメイトだったことがある程度分かる。小・中学校から高校にうつる過程で曖昧だった各ランクの境目がくっきりと区別されていき、この言葉に表せないような不思議な高校が持つ圧力が二人の仲を引き裂いたと思うと高校の恐ろしさに改めて気付かされる。
この作品を見るとその部活で次のステップあるいはその部活で進む進路がないとわかっていてもやる意義があるのか考えさせられた。”楽しい”という感情だけで続けられたらどれほど楽なのか。高校生の時に見るべき作品であり見てはいけない作品であると思う。
