Kogarath

桐島、部活やめるってよのKogarathのレビュー・感想・評価

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
4.6
評価が高いのを知りながら9年間もスルーしていた自分をブン殴りたいくらいの傑作だった。

何気ない高校生活のワンシーンをいくつもの視点から繰り返し見せる編集の中で、見えてくる様々な関係性。
学校という狭い場所が、彼らにとっては世界そのもの。複雑な人間関係の中で自分の立ち位置を確保し、アイデンティティが他者との関係の中に根差してしまっている。その中心にいた桐島が消失することで崩れていく関係性の脆さと、そこから距離をおき自分のやりたいことをする映画部の強さ。夕暮れの中、それに気づいてしまった宏樹役の表情がとてもいい。東出昌大、スクリーン映えする長身に加え、にじみ出る空虚さが役と合わさったときの存在感は唯一無二だな。

他にも、今では主役級の俳優がゴロゴロ出ているので観ていて楽しい。
橋本愛は美しすぎるし、仲野太賀はやっぱり上手い。イヤ~な感じが印象的な女の子、誰だろうと思ったら松岡茉優だった。すげえ。
そして一番親近感が湧くのは神木隆之介。クラスの隅にいて、全くスポーツ出来なくて、女子と話すときオタクっぽくなる映画部の前田。身に覚えがありすぎるので、否が応でも自分を投影して観てしまう。なので教室でバッタリ見てしまうシーンではかなりダメージを受けた。笑
でも大丈夫、きっと本心から付き合ってないし、よほど映画好きじゃないと鉄男のリバイバル上映なんて観に来ないよ!と励ましたくなるので自分も変わらんなーと思う。

白眉はやはり終盤の屋上。
桐島の不在によって露わになる彼らの不安、虚しさ、孤独、怒り…それらが一か所に収束していく加速感。
僕は完全に映画部の前田と同化していたうえ、ゾンビ映画好きなのもあって、並々ならぬカタルシスを感じてしまった。「やっちまえー!」と叫びたくなる。恐ろしい映画だ。8mmフィルムの使い方も最高だし、吹奏楽部が奏でるワーグナーがずっと鳴っているのも最高。監督も絶対これ、自分を前田に投影してるよね。「好きな映画と繋がっているような気分」ってセリフも、最高だ。
Kogarath

Kogarath