キャサリン子

桐島、部活やめるってよのキャサリン子のネタバレレビュー・内容・結末

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

とある田舎町の県立高校映画部に所属する前田涼也(神木隆之介)は、クラスの中では地味で目立たないものの、映画に対する情熱が人一倍強い人物だった。
そんな彼の学校の生徒たちは、金曜日の放課後、いつもと変わらず部活に励み、一方暇を持て余す帰宅部がバスケに興じるなど、それぞれの日常を過ごしていた。
ある日、学校一の人気者であるバレー部のキャプテン桐島が退部。
それをきっかけに、各部やクラスの人間関係に波紋が広がり始めていく。
早稲田大学在学中に第22回小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウのデビュー作を映画化した青春群像劇。


バレー部のキャプテンで人気者、しかも校内一美人の彼女持ちの桐島。おそらく成績も優秀なのでしょう。
そんな桐島が突然、部活を辞めた。
なぜだか学校にも来ないし、連絡も取れない。
なぜ辞めたのか、は誰も知らない。
「どうして…?」
そんな不穏な空気がずっと流れる。
桐島という「絶対的な存在」が不在となったことで周囲の人間たちに、動揺が走る。
物語としては、たった5日間程度。
その数日間の出来事を、登場人物それぞれの視点で描いている。


桐島の彼女の梨紗(山本美月)、
桐島の親友で、スポーツ万能で野球部…でも全然部活に顔を出さない…の菊池宏樹(東出昌大)、
宏樹の彼女の沙奈(松岡茉優)、
宏樹に片思い中の吹奏楽部の部長・沢島亜矢(大後寿々花)、
バドミントン部所属で帰宅部の男と密かに交際しているかすみ(橋本愛)、
かすみの友人で自分の実力の無さに劣等感を感じているバドミントン部の実果(清水くるみ)、
かすみに密かな想いを寄せる映画部の涼也(神木隆之介)。


まだアイデンティティーを確立しきれていない高校生たち。
やりたいことが見つからない、
今のままで良いとは思わないけど変えたいとも思わない、
変えたくてもどうしていいかわからない…
そんな思春期の感情の機微が非常にリアルに描かれていた。
桐島がいなくなったことで一番影響を受けたのは宏樹だろう。
親友だと思っていた奴が、なんの相談もなくいきなり部活を辞め学校にも来なくなった。
取り残されたような空虚感。自分は何がしたいのか分からず焦る気持ち。つまらない日常。
プロのスカウトなんて来るはずもないのに、やれるだけの事をやっている野球部の先輩や、映画監督になれなくても好きな映画と繋がった瞬間を大切にしている同級生……そんな彼らが、宏樹を泣かせた。
結局は、他人からバカにされても自分の好きなことを一生懸命やっている人って最強なのだ。
自分を持っている人は、カッコイイし輝いて見えるのだ。


夕暮れの屋上で宏樹と涼也が向かい合うシーンからエンディングタイトルが出るまでの映像がとても美しくて、宏樹の心の中を投影しているような清々しさを感じた。

味わい深く、素晴らしい作品だった。
この作品が評価されたことを心から嬉しく思う。
キャサリン子

キャサリン子