はて…何を見せられた
のだろう…と。
ただ…高校時代を
思い出した…。
残酷なノスタルジーか。
それとも…。
「桐島、部活やめるってよ」
バレー部のスーパースターである桐嶋が部活をやめた。校内に駆け巡った情報はその周りにいた生徒たちの日常を歪めた。その数日間をリアリティ溢れる、筆致で描いた作品。
大人になってしまった自分には、思い出すには時間がかかりましたね。故に理解するのも…。
スクールカーストと言うヒエラルキーの頂点にたつ者、何らかの影響を与え、周りはそれに追従し依存する…。故にそれが消えた時、その依存していた者たちはレーゾンデートル(存在意義)を自らに問わねばならなくなり混乱し狼狽える。だが、ヒエラルキーの下位にいたと思っていた者たちはなんら影響を受けておらず、実は自らの存在意義を持っていたと言う事なんですかね。何ら見返りを求めず、楽しい事に一直線の者と打算と怠惰で生きてしまった自分を恥じるもの、それすら気づけない愚か者と別れていく…
また女子を中心とした裏表の世界がまたリアルかつ酷くて複雑。ヒエラルキーのトップと付き合う事でその権力を有し、かつまたその女に擦り寄る事で高みを得ようとするもの。また付き合っている事や同じ中学だったことを隠すやつ。
数日間の出来事をほんの二時間で纏め、高校と言う違和感だらけの場所に生きる生徒たちの繊細な心情をリアルにかつ間接的な表現のみで切り取ったと言う部分においては傑作でしょう。誰一人直球でこんなことを言う訳でなく、行間を読ませ考えさせるとしたら、文学的でもありますね。
まぁ、ある程度キャラクターはスクールカーストにありがちなポジションを与えられわかりやすくなってますし…。ただ…それ故、自分たちの高校時代に当てはめようとするともっと複雑で、わからなくて、大変で、楽しい部分が多かったかなと。桐嶋みたいな奴はいなかったし(笑)
因みに私のポジションはかなり変で、ギークのまとめ役でありながら、スポーツ系やヤンキー系とも普通に喋れて、女の子たちとも喋ってましたよ。飲み会にも呼ばれてたし(笑)それなりに口が立つ事もあって。またオタクという言葉もなかったし。まぁ、苦労人でしたから、そのあたりで一目置かれてたかも…。
まぁ、映画が好きだからって陰キャだと思うなよって事かも知れませんが(笑)
撮影方法が各カーストの代表の視点を各々映し出し、心情を繊細に描いている点(故に時間が巻き戻るような)、肝心要な人物を隠す事で周りの混乱や心情変化を詳らかにする点など監督の能力が高く、ぼんやりとした間接話法でありながら、伝わるように考えさせてくれる良作なんだと思います。
ただ…あまり好きな内容じゃないんだけどね。楽しいかって言われたらNOだし。今思えば、高校って社会の入り口で、僕は田舎育ちだったから、自我を持った段階で初めて知らない奴らと一緒になった気がして…。だからそれ相応の立ち位置になるようしていたんだと考えたりするとなんか、悲しくなるんですよね…。