フラハティ

桐島、部活やめるってよのフラハティのレビュー・感想・評価

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
4.4
「桐島部活辞めたらしいよ。」
「はぁ?まじ?」


ここまで刺さるとは思わんかった。
これから先もきっと心に残り続けるんだろうな。
おもいっきり宏樹の目線で見てたよ。

突然学校から姿を消した桐島。
勉強ができて、スポーツができて、彼女がいて、友だちも多い。
何でも出来るスーパーマン。

学生時代のスクールカースト。
なんとなく運動部のほうが文化部よりも偉いとか。
あいつはイケてるとか。
あの子はイケてないとか。
本作では、あまり大げさに語られることなく、いつの間にか彼らの立ち位置が見えてくる。
これがすごく上手い。
あと桐島の存在をボヤけさせまくってたとこもいいよね。
ミステリーのようでありながら、こうしていたのにはちゃんとした意味があった。


学校ってほんとに小さな世界でしかない。
でも世の中の縮図なんだよね。
やりたいことやってるやつとか、何にでも努力を惜しまないやつとか、周りの顔色うかがうやつとか、テキトーに生きてるやつとか。
たった3年しかない高校生活。
その3年でたくさんのことが経験できる。
そういう世界だからこそ、やりたいことを見つけられるやつほど幸せなんだと思う。
何であんなに頑張ってるの?
何のために?
努力したって結果が出ないのに。
「結局、出来るやつは何でも出来るし、出来ないやつは何でも出来ないんだろ。」

本作で映画部が撮ってる題材が"ゾンビ"ってのが活きてくる。
ゾンビは生きてはいるけど、実際は死んでるよね。
ただ人を喰らうために"存在"してるだけ。
それって、人生に目的もなく生きている人間と何が違うのか。
あと、考える余地がありすぎる作風なんだけど、この部分は無意味なことまで(他人の評価とかカーストとか)考えてた、学生時代のあの頃みたいだ。
考えたって意味ないのに、なんか考えてしまったりさ。
そこまでも本作はリアルだし、面白い。


※ここからネタバレ?

間違いなく本作は、僕ら世代の青春映画の代表作。
ってか青春映画だと思ってたけど、この映画って人生についての映画だよね。

宏樹を見てればずっと感じる。
今の自分ってなんだろう。
周りからは、恵まれてて優秀なんだって思われてる。
けど実際は違って、自分の人生の意味とか、これから先の未来をどうしていけばいいかわからないんだ。
居場所がどこにあるかすらもわからない。
今だってなんとなくでしか生きていられない。
今の自分は空っぽで、何をしてても目的や意味を見いだせない。
だって人生ってそうだろ。
少なくともそう思ってる。
あいつらはちゃんと生きてる。
俺はちゃんと生きられてないよ。

カメラで写されたあの瞬間。
宏樹に芽生えた感情が、痛いほど今の自分にも突き刺さった。
止めて欲しいって思った。
写さないでほしいって思った。
自分は存在しかしていないことを突きつけられたようでさ。
だからこうも思う。
何もしてない自分は何なんだろうって。

高橋優の『陽はまた昇る』の歌詞もまたいいんだよなあ。
「選ばれし才能もお金も地位も名誉も
持っていたっていなくたって同じ空の下」
ってとこが本質だよね。


生きることってなんだろう。
そう思うこともある。
わからなくなることもある。
でも違うんだよ。
わかんなくたって。
それでも生きなきゃならないんだよ。
そうだ。
僕たちはこの世界で生きていかなければならないんだから。
フラハティ

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