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桐島、部活やめるってよの青山のレビュー・感想・評価

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
3.8

とある高校。バレー部のエース桐島が部活をやめるっていうニュースが校内を駆け巡る。
タイトルにもなってる「桐島」本人は出てこず、周辺の生徒たちを俯瞰で描いた青春群像劇、
原作は未読ですが、聞きかじったことによると、原作は人物ごとに章立てられているのに対し、映画では曜日によって章立てる形に再構築されているようです。


高校生の日常を描く群像劇なのではっきりとしたストーリーの主軸のようなものはありません。
しかし、桐島が部活をやめたことの波紋が、各部活で試合や発表会を控えた時期の学校内に広がっていき、それによって登場人物たちがそれぞれ何かしらの変化を迎える......というところで一本筋が通っていて見やすいです。そのへんはさすがの喜安さんですね。

そして、本作のキモはそのリアリティ。
「スクールカースト」という明文化されてるわけでもねぇのに確固として厳然と学校の中に存在するルールが題材なので、学生時代にこの枠組みに組み込まれていた人間ならば誰もが何かしらの感情を抱くはずです。
個人的には、地味なカースト底辺オタク......それどころか、映画部で映画甲子園に参加してたことまで、あと眼鏡かけてて実はイケメンなことまで、何から何まで神木隆之介と自分の境遇が重なったので、「そうか、私が神木だったのか......」という気持ちになりました。
しかし、高校の時の私に彼のような情熱はなく、なんなら今だってないので、同じオタクとして彼の真っ直ぐさに憧れを抱いたりも。
とはいえクラスでは酷い扱いで、①基本的に存在を認識されない、②私を認識した人間は私を嘲らなければならない、③私と親しい人間は私同様キモい、という設定を与えられているところも同じなのでやはりかなり感情移入しちゃいました。

一方で、当時は「エネミー」という1単語でしか認識していなかったカースト中〜上位の人物たちにもそれはそれで悩みや葛藤があったのだと、今にして思えば理解できたのも面白かったです。
橋本愛は私の嫌いなタイプの女だけど、こうして見れば彼女の気持ちも分かる。それどころか松岡茉優に至っては高校生当時なら「死ね(けどやりたい)」くらいの感情しか抱かなかったであろう人間ですが、そんな彼女にすら寛大な気持ちで共感しちゃったりするからすごい。
結局あの世界で私たちはそれぞれの役割を必死に演じて、主人公から端役までみんなそれなりに悩んだりもしてたんだなと、俯瞰の視点で見せてくれる素晴らしい作品でした。

そして、「青春は爆発だ」と言わんばかりのクライマックスはエモい。そして、エモいお祭りのあとのあとの祭りは永遠の陽光となって僕らの目に焼き付くんだ。


「青春」という2文字に、平仮名4音以上の何かを読んでしまう人には鋭くぶっ刺さる鉄風のような映画でした。
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