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少年は残酷な弓を射るのleylaのレビュー・感想・評価

少年は残酷な弓を射る(2011年製作の映画)
4.0
赤・赤・赤。
鮮烈な赤のイメージ。
悪意であり血であり嫉妬であり悪魔のような赤。ずっと不穏なままヒリヒリとする描写はリン・ラムジー監督らしくてワクワクしました。

母親だけに反抗的な態度を取る息子。
なぜ息子は自分に敵意を向けるの?
わからないまま母は苦悩する。

過去の回想シーンをフラッシュバックさせながら、少しずつこの母と息子の関係性や全容が見えてくる描写方法は『ビューティフル・デイ』にも似ている。

これは小説の中だけではない、現実的に親と子の愛情のあり方を問う作品。サイコパスの起因を知る一端であるかもしれない。どうすればいいか解決策がわからないことが1番の恐怖だと思う。

銃乱射事件のように、最初は実話なのかと思って観ていたけど、小説をもとにしていると知り少しホッとした。

息子(エズラ・ミラー)は母(ティルダ・スウィントン)の偽物の愛を、胎児の頃から本能で感じ取っていたのだろう。愛情の表し方を知らない。愛し方もわからない。2人は似た者同士だと思う。

息子は母の愛に飢えながら本能のまま生きていたし、母は息子を愛せないことを隠し、本能のどこかで必死に愛そうとしていた。

息子は、母にだけは矢を向けなかった。

18歳になった息子を抱きしめた母は、その時初めて母になれたのかなと思った。

ティルダ、すごいです。手や足の先までなりきっている。子役の子もうまかった。愛と敵意が混じる眼差しが忘れられない。

音楽はグリーンウッド。明るい曲が不気味さを増し、三味線のような和の音楽が不穏さをかき立てる。独特の世界観を放ちました。
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