竜平

スマグラー おまえの未来を運べの竜平のレビュー・感想・評価

3.5
ひょんなことから裏社会の運び屋として働くことになる男に舞い込むヤバすぎる仕事、その行く末やいかに、という話。真鍋昌平による漫画が原作、キャラ濃いめの面々が織り成す石井克人流バイオレンス劇場。

原作は未読。石井克人作品で言えば『鮫肌男と桃尻女』や『PARTY7』あたりにもあるような、内容は置いといたとして見てるだけでもなんか楽しめちゃう映像と、ひたすら絵になる登場人物たちにそれを演じる豪華なキャスト陣。今作では妻夫木聡を筆頭に、永瀬正敏や松雪泰子や満島ひかりなど魅力的な面々が多数。高嶋政宏の怪演がすこぶる楽しい。もはや妖怪の安藤政信、その強さに笑う。ストーリーとしては、ヤクザと中国マフィアの間で起こる抗争や裏切り、そこに巻き込まれる主人公らという構図。群像劇メインではあるけども、見方によっては主人公の、なんというか「覚醒」にも似た人としての成長の物語にグッときたりするのかも、なんて。妻夫木演じる主人公の男は俳優志望ながら夢半ばで堕落してしまい、気づけば借金苦な人生を送っている。例えばそんな彼のような夢追い人、ないし「かつて追っていた人」にとって今作はなかなか痛烈なメッセージを残すのではないか。要するに文字通り「“死ぬ”気でやれ」というような、お前は本当に本気を出してるのかというような、精神面への問い。とまぁこれは半分妄想でもあるけどね。生々しさと痛々しさ強めな残虐描写や拷問シーン、これは苦手な人にとってはちょいキツいかも。いやしかし、マジでどーしようもないような困難な状況に陥らないと重い腰を上げない、みたいな人の心理、わかるんだよなぁってゆー自分がいる。

ここ最近で再確認したのは、漫画実写化の邦画ってのはやっぱり原作を知らない状態のほうが俄然楽しめるぜってゆー。今作に関しては、この映画キッカケで原作の漫画も読んでみたくなった次第。
竜平

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