菩薩

青春神話の菩薩のレビュー・感想・評価

青春神話(1992年製作の映画)
4.3
狭い方へ、暗い方へと、人目に付かぬように、ゴキブリの様に生きている、そんな生き様だって、あるのではないか。食う・寝る・出すの一本の管として生息を続ける我ら人間、時には声を、涙を、血を、糞を、そして精液を、どこかに向かって排出していかねばならない。雨、止まない雨、都市を流れる大動脈の下の下水は今日も詰まり、排水口からは水が上がり部屋を侵食してくる。夜には何でも揃っていると思うラブホテル、その狭く薄暗い一室に取り残される彼女が迎える朝に、残っているものなど何もない、その部屋の窓からは、景色さえも失われている。小銭が沢山あれば、僕らはその夜を乗り越えられる、けど傷つき足を無くした僕らは、もう何処へも行けないかもしれない。あの時僕を睨みつけたお前に対する復讐、お前も本当は、あのゴキブリと同じだろう、だが彼の真上の天井もまた低い。父よ母よ、僕も彼らのように、自由に生きたいのです、交わるはずもない、二つの白ブリーフの世界、だが彼は、目の前で鳴る受話器を取る事は出来ない。神話とは程遠い青春の一ページ、止まない雨は無いのかも知れないが、また降らない雨も無いのである。
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