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わたしを離さないでのpikaのレビュー・感想・評価

わたしを離さないで(2010年製作の映画)
4.0
有名なのでいつか見ようと機会を伺っていてディストピア映画の流れで見てみた。
過去の設定というのがいい。平行世界というのか、なるほど技術的に言えばその時代から可能な話で倫理上の問題だからか、上手いな。ディストピアで平行世界を舞台にしているのは珍しい部類なのかな、初めてかも。近未来を舞台にしているよりも身に迫る。今まさに起きているかもしれない、あり得る現実というifが突き刺さる。面白い。

何よりも凄いのが100分弱で語りきってしまったところ。野暮ったい部分は潔く切り捨て、キャリー・マリガンの表情と心象を映す叙情だけで見せきっている。
誰もが持ち得ている感覚への問題提起。コピーの是非ではなく誰しもに等しく訪れる死への道中に生はどう在るのかと問う。
想像するだけで涙がちょちょぎれそうになるドラマがゆえかしみったれずかなりドライな演出にしているが美男美女が淡い光の中でアンニュイな表情を見せているだけで多分に多弁。
雰囲気映画に見えかねない抑えに抑えた叙情は宿命を負って生まれた彼らのドラマだけに終わる映画ではないということだろう。映画を見ている我々に対して真っ直ぐに問いている。

子役が激似で衝撃的だった。キーラ・ナイトレイも似てるけどキャリー・マリガンなんて本人じゃね?
アンドリュー・ガーフィールドがちょっとおバカちゃんに見えるのはわざとなのだろうか。純朴で朗らかな印象はあるがキャリー・マリガンが毅然と知的な感じなのでうーむ。

観客側に委ねている部分が多く、映画だけ単体で終わると少し物足りなさが残る。余白がありすぎる。それを埋めるのが映画ではなく観客側というのがズルいような気がしていまいち感想がまとまらないが、叙情演出がとても良かったし没入して酔えるだけの魅力はあるので概ね満足。ただ原作が傑作らしいのでその魅力は原作自体が凄いんだろうなとは思った。
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