Kuuta

ローマの休日のKuutaのレビュー・感想・評価

ローマの休日(1953年製作の映画)
4.0
午前10時の映画祭にて。
脚本の中心にローマのデートシーンを配したシンメトリックな構成。ニュースで報じられる公的な姿の対比として、最後に写真が出てくる。ハイヒールを嫌がっていたアン王女(オードリー・ヘップバーン)は靴を買い換え、髪を切り落とす。

ミルクとビスケットを食べ、パジャマを求めていた子供がやがて大人になって、仕事をするようになる。無数の人々の願いを知った王女は、冒頭の舞踏会と対照的に階段から降りて、世界の記者たちと握手する。

車の使い方。冒頭のタクシーでは、ドアの枠で王女とジョー(グレゴリー・ペック)を隔てた撮り方をしているが、デート中は同じ車のドアから2人が外に出る。別れの場面ではカメラが車内まで入り込み、2人は抱き合う。

お金を右のポケットに入れた翌日、王女の正体に気付いたジョーは、彼女の写真付きの新聞を同じポケットにしまう。この時点では彼は彼女をお金と同一視していることが分かる。

光の演出。屋敷を抜け出す場面での影を生かした見せ方。別れのシーンで、王女の涙を的確に輝かせるライティングが見事。

最後まで建前を保って会話を続けるのが洒落ている。その2人が建前を忘れて無邪気に楽しんでいるように見えるのが真実の口のシーンであり、ダンスパーティーの乱闘シーン。見てるこっちも楽しくなってくる。

ラストシーンで彼女は王女としての成熟の代償に、少女のような無邪気さを封印する選択をする。人間性を捨て、「作られた存在」になる運命を受け入れる。内に秘めたその切なさと強さを、眼差し一つで表現している。日本の皇室の皆さんも、いつもの笑顔を浮かべるまでに色んな葛藤があるんだろうなぁと思った。

言うまでもないがオードリー・ヘップバーンという女優は、その辺の街にいそうな生々しさが全く無く、だからこそのスターである。そんな彼女の浮き立つようなスクリーン上の存在感が、初主演の今作では上記のような形でストーリー上も補完されているのが非常に興味深い。偶然回ってきた役らしいが、彼女の役者としての方向性はこの一作で決まってしまったのかもしれないと思った。81点。