河豚川ポンズ

ローマの休日の河豚川ポンズのネタバレレビュー・内容・結末

ローマの休日(1953年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

70年近く経っても色褪せないラブロマンスな映画。
映画館で観る白黒映画ってどんな感じなんだろうかって思ってたけど、想像してた以上に普通というか、案外気にならないもんなんやなって。


ヨーロッパ某国のアン王女(オードリー・ヘプバーン)は、ロンドンやパリを始め、ヨーロッパ各国を表敬訪問していた。
その中でやって来たローマではアン王女の歓迎舞踏会に出席するが、分刻みの過密スケジュールとお決まりの退屈な公務が続いて、ヒステリーを起こしてしまう。
主治医から鎮静剤を処方してもらうも寝付けなかったアン王女は、真夜中にひっそりと宮殿を抜け出してしまう。
宮殿から遠く離れたところまでやって来たところで、ようやく鎮静剤が効き始めてベンチで寝てしまう。
そこをたまたま通りがかったのは、ローマに駐在中のアメリカ人新聞記者、ジョー・ブラッドレー(グレゴリー・ペック)だった。


イタリアと言えばと聞かれれば、コロッセオとかトレビの泉とかピザとかサッカーとか、思いつくものは色々とあると思う。
その中にはたぶん「真実の口」もあるだろうけど、この映画で知る人は少なくないだろう。
というか、イタリアに旅行したことがある自分にしても、「ローマの休日」で登場したっていうのが無かったら、ただの人面のめちゃくちゃデカい皿にしか思えない、本当に何がすごいのか何がありがたいのか。
そんなよく分からないものでも、公開から70年経った今だに名所であり続けるのは、この映画があるからこそ。
そこまで語り継がれるからには、いったいどんな甘々なラブロマンスなのかと思いきや、それとは全くの逆の切ないというか綺麗で儚いラブストーリーだった。
「ロミオとジュリエット」よろしく、人は身分違いの恋とか叶わぬ恋とかがみんな(?)大好きだけど、「ローマの休日」もまさにそれ。
かたや由緒正しき一国のお姫様、かたや借金まみれの貧乏新聞記者。
誰がどう見たって釣り合うはずなんて無いのに、悲しいほどに2人は意気投合して、オードリー・ヘップバーン演じるアン王女はローマ観光を楽しむ。
その中でのオードリー・ヘップバーンの可愛らしいこと、この時点で彼女は完全に無名のまさに新人女優だったわけだけど、すでに大スターだったグレゴリー・ペックの相手役に無名の新人をぶつけるなんて無茶が過ぎる。
でもスクリーンでの彼女の立ち居振る舞いを見れば納得する。
王女として気品のある姿で物語が始まったかと思えば、年相応の天真爛漫さでニコニコとローマ観光を満喫している。
監督もウィリアム・ワイラーも「この娘しかいない!」と確信してキャスティングしたそうだけど、そりゃあこれだけチャーミングならこの人しかいないとも思うだろうね。

全編に渡って台詞回しが含蓄のあるというか、とてもおしゃれな言い回しが多いのも特徴的だった。
特にもうラスト付近はそういった言い回しのオンパレード。
いちいちここで上げていくのも野暮ったいので言わないけども、多すぎないセリフの中でここまで上手いことをよく言うなあとなぜか感心してしまう。
アン王女はともかくとして、ブラッドレーは本当に一新聞記者で収まるような言葉選びのセンスじゃないでしょ。
まさしくおしゃれな大人ってのはああいうのを言うんだろうなあと思わされる。
そして叶わぬ恋と二人とも痛いほどに分かっていながらも、ローマで過ごした時間を反芻しその場の2人だけが目で会話しているラストシーンが、とにかくもうなんていうか素敵すぎる。
語彙力が著しく低下してるけど、このラストは本当に自分の中でトップクラスに好きなシーンだったことは間違いない。

相変わらず、ストレートじゃない恋愛ものが大好きな自分からすると、どうしてもっと早く観ておかなかったんだ…と後悔しているので、まだ観てない人は気が向いたら一度観てみると良いかもよ。