ひかりB

ローマの休日のひかりBのレビュー・感想・評価

ローマの休日(1953年製作の映画)
4.9
映画史に燦然と輝く「スペシャル」を前にして恐れ戦いてます。気品の何たるかをわきまえていないぼくのような粗野な人間がたとえ百万語の美辞麗句を積み上げたところで、結局のところ2×4の建売住宅のように無残なものしか著せないのではないかということに…。

とにかくはじめてみようと思います。

黄金比についてです。

人類には遺伝子レベルで「美しい」ものを感じる素養が世代を跨いで伝えられているようです。何に「美しい」を見出すかは個人的な範疇と思えますが、実のところそれは人類の共通認識なのです。それを説明してくれるのが、黄金比です。

黄金比は円周率や2の平方根と同様無理数ですが、仮に近似値1:1.618 で表されます。何が「黄金」なのかということを説明するときよく使われるのが、フィディアスの傑作である「パルテノン神殿」です。神殿は調和と安定の象徴であり、それはそのまま「美しい」に通じるものと考えられます。そしてこの構造物の正面に立っていただくとその全体長方形の縦と横の長さの比率が1:1.618というわけです。

パルテノン神殿だけではありません。この1:1.618を見いだせるのは、たとえばジョルジュ・スーラの「アニエールの水浴者たち」やサルバドール・ダリの「最後の晩餐の秘蹟」の絵の中にも。あるいは身近なところではクレジットカードの縦と横の比率にも黄金が隠されています。

「美しい」と思うものが黄金比なのか、黄金比だから「美しい」のかはさておき、ウィリアム・ワイラーは間違いなく「スペシャル」なものを遺しました。

近似値1:1.618

古都ローマに古の大帝国建国以来の輝きを与たえたことを「1」とし、「オードリー」という類まれな個性を見出したことを「1.618」と見るのはこじつけに過ぎないでしょうか。

本作品を「人工的構造物」と見たとき、たとえばロンドンの大英博物館は「欲深」の象徴としての殿堂。バルセロナのサグラダ・ファミリアは「感性」の未だ途上の偉大なる試み。斑鳩の法隆寺・五重塔は「叡智」が成した尋常ならざる結晶。これら「スペシャル」に比肩すると考えられる『ローマの休日』は人類が到達し得る「気品とロマンス」の最高峰、と記して本レビューを締め括りたいと思います。