Kuuta

ゴジラ2000 ミレニアムのKuutaのレビュー・感想・評価

ゴジラ2000 ミレニアム(1999年製作の映画)
2.1
1999年公開の23作目。エメリッヒを馬鹿にする日本のゴジラオタクは、東宝が今作のような映画しか作れなくなっていた現実をもっと誠実に受け止めるべきだ。

エメリッヒ版へのファンの不満を背景に、VSデストロイア以来4年ぶりに復活したゴジラ作品。監督はVSモスラ、メカゴジラ、デストロイアの大河原孝夫。

初代の様な社会派メッセージの強調、インターネットを題材にした「現代的な」脚本、発展途上なCG合成…まさに時代の狭間で、色んな要素が滑り倒している。ダメな人間パートが大半を占める上、怪獣バトルもイマイチ。

せっかくのリブートなのにゴジラが主役になっておらず、敵怪獣の相手役のような扱いに終始しているのが一番ダメな所。

行き過ぎた科学への警鐘といったシリアスな要素を入れようとしているが、人間パートはUFOの描写に手一杯。各シーンは断片的でまるで連動せず、映画になっていない。唐突な心情吐露ばかりで人物の内面も描けていないので、彼らの行動が心に響かない。音楽もパッとしなかった。

怪獣保護スタンスの篠田(村田雄浩)とゴジラの死を望む片桐(阿部寛)を対立させようとしているが、最後まで噛み合わない。エネルギー政策批判、エイリアン侵略もの、怪獣プロレスと乱暴に展開が放り込まれる。一つ一つを消化しきらない雑な構成。

そもそもUFOのCGが酷いので世界観に入り込めない。真面目に見ようとする気力を、UFOのビジュアルがじわじわと奪ってくる。

冒頭、久しぶりのゴジラ登場なのに溜めが足りない。ここはCG云々以前の部分であり、制作側の「ゴジラを撮る」基礎体力の衰えを感じた。光に反応する展開や、嵐の中で第五福竜丸チックな船を咥えるビジュアル、山陰からの上半身と、初代オマージュは多い。

ゴジラの目前に車が止まり、息で車のガラスが曇る、割れるという演出をやっているが、ここもCGが不自然で…。ゴジラの目の妙な可愛さ、石やUFOの合成の粗さ、異様な急旋回を見せるヘリや戦闘機など、詰めの甘いビジュアルが目立つ。

そもそもゴジラがどんな扱いをされてきた世界なのか説明が無いのはどうかと思うが、民間のゴジラマニアが「予知ネット」を作って独自にゴジラを見張り、情報を企業や国とやりとりしている。この設定自体は面白い。後半全く出てこなくなるのがもったいない。

東海村原発の緊急停止。全編通して編集が緩く、人間にも怪獣にもスピード感がない中、この描写だけはちょっとテンション上がった。今作公開前に実際に臨界事故を起こしている。自衛隊の戦闘シーンは、先述したCGの不自然さも相まってリアルに感じられなかった。娘が航空機の爆音でうずくまる場面は、怪獣と戦う自衛隊が人間を脅かす可能性を示している。

「地球、破壊、征服、抹殺、支配、永遠、革命、王国」と、分かりやすく内なる野望を見せてくれるエイリアンさん。パソコンが電源無しで動く感じは「リング」風?大気組成の変化はレギオン、敵を取り込もうとするのはイリスのパクリなんだろうか。

「岩塊が、飛び立ちましたぁ!」「明日の天気は…快晴です」。事態の悪化を喜んでいるように見える佐野史郎演じる宮坂は、科学者の気持ち悪さ全開で良かったが、他の演者は全体的に、自分が何を演じているのかよく分かってないのでは、と言いたくなる妙なテンションだった。

前半は見せ場もなくただ鈍重。後半の人間パートのグダり様はかなりのレベルに達している。下手に未来人とか出してない分、一定のシリアスさは保たれており、よりシュールなことになっている。

まず、由紀(西田尚美)の心変わりのきっかけがさっぱり分からない。自衛隊が爆破直前のビルへの民間人の立ち入りを許すのもメチャクチャだし、由紀が子供を連れて行ったり来たりする下りと、その後の篠田のダイハードっぽいビル脱出パート(効果的とは到底思えない新型爆弾、暴走する片桐と止めに入る宮坂など)は、歴代ゴジラの中でも最低クラスの出来だと思う。国と民間の矛盾ってことなんだろうが、私は何を見せられてるんだろう…と意識が遠のいていった。親子の再会シーンの間の取り方、皮肉交じりの「なんとか生き延びたよお」。尽く乗れないテンションだった。

〆の怪獣プロレスすらイマイチで、ゴジラにピンチらしいピンチがなく、カタルシスがない。ほぼほぼ熱線撃ったら勝ってしまう展開に、緊迫感が生まれるはずもない。UFOを尻尾でどつくゴジラ、真横から来たUFOに吹っ飛ばされるゴジラ。シュール過ぎる。タコ宇宙人には絶句。

(この間人間達は「仕事は終わった」とばかりにボーッと立ちっぱなしで、戦いが終わると実感の伴わない教訓を呟きだす。片桐の展開、心情説明が飛びすぎていて納得しろという方がおかしい)

エンディングはガメラ3を形式だけ真似したのだろうか。唐突な「リベンジ」という台詞は、公開が99年末と考えれば松坂の流行語を引っ張ってきたんだろう。ゴジラの体長55mという新設定は松井から逆輸入したらしいが、安直な印象は拭えない。

オルガは現代的な見た目(エメゴジ意識らしい)と不釣り合いに鳴き声は結構かわいいし、全体になんかのっそりした感じが魅力的ではあった。新宿のミニチュアはどれも力が入っており、最後の爆発はちょっとだけシン・ゴジラの熱線を思い出すような景気の良さではあった。

総じて、まともな映画としてはまっったくお勧めできないが、シュールなUFOや、人間ドラマのメチャクチャっぷりは相当突き抜けており、笑いの最大瞬間風速の高さは評価したい。42点。
Kuuta

Kuuta