ポン・ヌフ橋付近、夜のパリの艶やかさを、思いもよらない形で活写したブレッソンの怪作。橋上で出会った2人が...というところで『ポンヌフの恋人』に繋がることに気づく。が、カラックスのようなロマンチシズムは、例によってほとんど無く、ひたすら化石のように冷淡なショットが続く。ブレッソンの歪なまでの状況描写は、恋愛映画の形をとった本作でも愚直に遂行されたが、そのドラマとして滑稽なほどの異様な質感に、ブレッソンの狂気的なストイックさを感じた。アクションやミュージカルのジャンル映画的な試みもすべて自分のテリトリーに引きずりこむ大胆さ。カラックスの新作ミュージカルにも鋭い作家性が発揮されるのを期待して!