グレハニスト森田

Kids Return キッズ・リターンのグレハニスト森田のレビュー・感想・評価

Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)
4.0
北野映画の中でも台詞を含め情報量が多く、わかりやすい映画だと思う。
若者たちが自己の存在意義を確かめるべく、それぞれの道に進むも、そのポストには順番待ちしている人間が何人もいて、自身がいなくてなってもなんの問題もなく社会は回っていく。
努力すれば報われる、みたいな薄っぺらな青春映画とは一線を画した、ポスト重視の没個性的な日本社会の厳しさを描いており説得力がある。
多くの若者が挫折を味わう中で、漫才コンビだけが劇場にそこそこの客を入れ、やや受けしているという結末(導入)は、リアルな成功の確率である様に感じた。
北野映画にしては丁寧すぎるくらい状況説明が多く、個人的には台詞量なんかはもう少し少なくても良かったかも。
相変わらずの久石譲のメインテーマは当然間違いないにしても、他作品と比べ強烈なシーンが少ない様に感じ、ある意味最も地味な作品と思う。
同じ青春映画なら「あの夏、いちばん静かな海」を推すかなぁ。

人気のあるラストは様々な解釈がある様だが、「あの台詞を言った時点でもう終わってるんだよ」と武が語っており、個人的にはその解釈がいちばん美しいと思う。

最近続編を作ったらしいが、あのラスト見てどういうつもりで続編を企画する気になるんだ、この野郎!(ビート風)