イチロヲ

色暦女浮世絵師のイチロヲのレビュー・感想・評価

色暦女浮世絵師(1971年製作の映画)
4.5
自らの死期を察している浮世絵師(福島むつお)が、献身的な妻(小川節子)に支えられながら、春画の製作に取り組んでいく。クリエイティブ精神が及ぼす性事情を描いている、日活ロマンポルノ。

芥川龍之介・著「地獄変」を踏襲しながら、春画に初挑戦することになった浮世絵師と、レイプ被害の過去をもつ献身的な妻の、両者の関係性を鮮やかにスケッチ。純然たるポルノ時代劇だが、劇伴にバッハを起用している。

前半部は「地獄変」の系譜で物語が進行するが、後半部からは良い意味で逸脱。タイトルにある通り、女浮世絵師の要素が動き出す。他人の性の営みを徹底的に人間観察して、自己のレイプ体験までも創造力に転換させていくところが面白い。

新刺激を求める大衆心理をサラリと描きながら、レイプ犯(前野霜一郎)に対するリベンジ劇へと繋げていく。ロマンポルノ初期段階にして、すでにクリシェが完成されていることに気づかされる。
イチロヲ

イチロヲ