歴史にのこる超大作。4つの時代における不寛容(イントレランス)の起こす悲劇とそれに抗う人々の感動ドラマ。
監督のD・W・グリフィスは前作「國民の創生」が黒人差別で有名な「KKK」を復活させてしまったことを嘆きその収益を全ぶっぱして製作したと町山智浩氏が書いておられたような、その文章はネット公開が終わってて確認できず。
ともかく映像は圧倒的。お札が渦をまいて荒れ狂ってるようだった。高さ100m、奥行き1kmにおよぶバビロン宮殿は映画好きならどこかで絶対目にしてると思う。
制作費だけなら今のハリウッドも引けを取らない、何なら上回る例もたくさんあるだろうにこの暴力的なまでのエネルギーはなんだろう。月並みな言い方だけどやっぱ実物はスゴいってことだろうか。
ただ宮殿にいくまで凄すぎて、肝心のそれが地味にみえちゃうのがおかしい。大量のダンサーもなんか手広げて歩いてるだけだし巨大石像上のエキストラもただうろついてるだけっていうか…まあ祝賀パレードのリアルっちゃリアルなんだろうけど。「地獄の黙示録」もオモロいのは前半で大ボスのウィラード大佐があんまりだったりで「語り草になる超大作」の常でしょうか。
4つの時代が交差するフクザツなお話だけどメインは現代とバビロンのふたつだけ、あとテーマ(不寛容)が共通するので基本全部おなじ話とおもえばわりあい理解しやすいかも…でも字幕は気合い入れて読んじゃうから目のつかれる映画ではあった。
フィルムの色がモノクロだけじゃなく青にもオレンジにもなるのは面白かった。これはどのバージョンでも一緒なのかな?ネット上だと他のサイレント映画もそういう感じっぽいが。
メインの女優さんがみなかわいいのもGOOD。真面目くさった演技派いうよりちょいぶりっ子入った感じもオールドハリウッドのいい意味での大らかさを感じるしこういうの嫌いな男の子はいません。音・セリフがつかえず身振りが大きくなるのが技術的制約が別の表現を生み出してる感じでよろしい。
現代編(いうて第一次世界大戦すらおきてないけど)のヒロイン役エメ・マーシュはキルスティン・ダンストに似ていた。わりに早く寿退社したそうだがそれまでジョン・フォード組の常連というのもうなずける上手さ。
じゃじゃ馬すぎて奴隷市場に売り飛ばされる「山の娘」役コンスタンス・タルマッジもいいんだよなー。黄金期ハリウッドを生きた人らしく光も強けりゃ闇も深く、残念ながら晩年は酒浸りだったようだが全盛期のたくわえ&投資の成功により経済的に苦労しなかったのだけは救いである。たまに仕事の誘いがあっても「若いころから演技なんてしてなかった」と冗談で返したというのがおかしい。