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イントレランスのTSのレビュー・感想・評価

イントレランス(1916年製作の映画)
3.6
【映画史黎明期の代表作】77点
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監督:D・W・グリフィス
製作国:アメリカ
ジャンル:歴史
収録時間:180分
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はっきり言ってこの映画は途轍もなく長い上にサイレントであり、四つの異なる時代がめまぐるしく変化するので退屈です。しかしながら、これが100年前の映画となると話は別でして、よくこんな大作を100年前に作れたなと感心するばかりです。当時では破格のエキストラ、スケールを誇っていたと思われます。大体1916年製作なんて、あらゆる映画よりも古い部類に入ってしまいます。人々が思い描いていた史劇大作はもう100年前に登場していた。映画史の参考書に、黎明期の代表作として必ずと言って良いほど掲載されている名作です。

イントレランスとは、「不寛容」という意味であり、四つの時代のとある「不寛容」に焦点をあてています。その時代ごとを繋ぐのはゆりかごを見守る一人の女性でして、最初から最後まで随所にこのショットが登場します。不気味といえばそれまでですが、今作において最も印象的な人物の一人と言えそうです。

その題材なのですが
①ペルシアのバビロン侵略(バビロン篇)
②キリストの受難(ユダヤ篇)
③サンバルテルミの大虐殺(フランス篇)
④現代における死刑囚の判決(アメリカ篇)
を扱っています。

キリストの受難はそれほどクローズアップされていませんが、ペルシアのバビロン侵略とサンバルテルミの大虐殺は相当なエキストラを登用しており、桁違いのスケールです。特にペルシアのバビロン侵略に関してはとんでもないセットを用意していて、さながら古代にタイムスリップしたよう。このバビロンは世界史で言う新バビロニアであり、かつてのユダ王国を滅ぼした国で有名です。ところがアケメネス朝ペルシアの進出により滅ぼされてしまいます。王朝の興亡は人類史を考えると古今東西普遍的でありますが、何故この時代に焦点をあてたのか気になるところです。
そこには、恐らく監督のグリフィスが古代にロマンを寄せていて、なんとか実写化したいという熱意があったのではないでしょうか。当時では破格の38万ドルを今作に使用したらしいですが、長すぎるのと当時では難解すぎたということで興行的には大惨敗した模様。しかしながら、当時としては斬新すぎる撮影法が後に評価されて、今では映画史の黎明期を語る上では欠かせない名作となっています。『市民ケーン』といい、古典的作品はこういう経緯をもった作品が多いように思えますね。

キリストの受難も当時としては挑戦的な映像であり、またサンバルテルミの大虐殺も相当なものがあったでしょう。このような全く違う時代を並行的に描く作品は現代から見ても稀と言え、グリフィスの良い意味での野望が垣間見えます。映画でここまでのことが出来るのだよ!という叫びにも聞こえます。
よって、映画史に名を残す名作、はたまた大作としては申し分ないですが、面白いかどうかとなると微妙なところ。いかんせん180分もあるのですから世界史に興味を持っていなければ相当きついと思われます。世界史は好きなので個人的には好印象でしたが、一般ウケはしないように思えます。

余談ですが、当初今作は約8時間にも及ぶ大作になる予定だった模様。周りの大反対により3時間に短縮されたらしいですがそれでも長いです。長ければ良いというものではありませんね。。

なお、グリフィスの個人的な印象ですが、今作といい『國民の創生』といいとんでもない作品を作る大家であると感じています。こういうとんでもない監督がいるから、映画史は変容していくのだと思えました。
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