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クロッシングのGreenTのレビュー・感想・評価

クロッシング(2009年製作の映画)
3.0
いつも女ったらしのロマンスグレーを演じているイメージだったリチャード・ギアが、引退間近の冴えない警察官ってのが意外でした。

エディ(リチャード・ギア)は、危険なブルックリン地区担当の警官。あと7日で引退なのに、署の方針で「ルーキーに危険な地域を経験させる」プロジェクトを任され、新米警官とパートナーにされてしまう。

どうもエディは繊細な人のようで、22年の警官生活で見てきた様々なことがPTSDのようになっているのか、手柄を立てることより規則を守って大人しくしている方を選んでいるように見える。なのでやる気満々の新米には「日和った年寄り」扱いをされる。

クラレンス(ドン・チードル)は、タンゴという偽名で麻薬密売組織に潜入させられている刑事なのだが、そのせいで私生活はメチャクチャ、奥さんには去られ、警察には「もう潜入捜査はいやだ。デスク・ワークに変えてくれ」って頼んでいるんだけど、受け入れられない。

この人は、そうこうしている内にギャングの生活に馴染んでしまったようで、親分のキャズ(ウェズリー・スナイプス)の右腕になっている。

サル(イーサン・ホーク)は、麻薬組織の手入れ専門の刑事なのだが、危険な仕事の割には給料が安い。敬虔なクリスチャンなせいか子沢山で、4人の子供の上にさらに奥さんは双子を妊娠中。だが奥さんは喘息持ちな上、家が古くてカビの被害があり、奥さんがいつも具合悪い。

しかし引っ越すお金もなく、家族を幸せにしたいサルは、ガサ入れで押収する金に手をつけるようになる。

この映画はこのイーサン・ホークが良かったですね。すごい顔しますよ。鬼気迫るというか。

警官って大変だよなあ。BLMとかでけちょんけちょんに言われてますけど、いい人はいい人だと思うし、マジメにやろうと思う人ほど心が病んでいくと思う。リチャード・ギアのキャラも、薄給で大変な仕事を任され、警察が間違ったことをするとまた世間に叩かれるからと黒人を犯罪者扱いして威権を保つようなことを提案されたり。

タンゴもサルも気の毒。

監督のアントワーン・フークアは『トレーニング・ディ』の監督とクーリオの『ギャングスタズ・パラダイス』のMV撮ったことで有名な監督さんですが、脚本を書いたマイケル・C・マーティンと言う人も黒人の人で、2人とも黒人のギャングスタの世界に精通しているのか、3人の警官が関わる黒人犯罪者たちの生態が克明に描かれているんだけど、「白人警官は黒人が犯罪者でなくても殺したりする」と言われている中で、白人警官2人がいかに過酷な状況で働いているかを描くんだ、と興味深く感じました。

それってやっぱ白人が主人公じゃないと客が入らないからというビジネス的な理由なのか、それとも人種関係なく、警察官の辛さに本当に共感しているからなのか。

描かれる警官の仕事を見ると、こんな仕事に就きたいと思う気持ちが解らない。もちろん感謝してますよ、おまわりさんの存在。すごい助かってる。だけど、なりたいかと言われたら絶対やだ。本当に大変な仕事。でも、すごい給料上げたら行政が成り立たないのかなあ。

あ!劇中で言われていたけど、麻薬組織から押収したお金は、行政が持ってって、「余分なお金」なので、それで行政の偉い人のオフィスとかを改装したりとか、どーでもいいことに使っているらしい。

警官の給料を上げたりはしない。

エディがリタイアするときも、汚い事務所でバッジを返して終わり。ねぎらいの言葉もない。

ちなみに3人の警官はほぼ接点はない。だけどクライマックスで一度だけ3人が同じ場面にいる長回しのシーンがなかなかカッコ良かった。このシーンまでは、役者も撮影もいいのになんだか散漫なイメージで退屈したけど、ここからは緊張感が高まった。

ラストはコメント欄で!
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