とーるさんし

クロッシングのとーるさんしのネタバレレビュー・内容・結末

クロッシング(2009年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

イーサン・ホークはその死に際し、部屋の床に置いてあるランプの光が彼の顔を優しく包み込む。またドン・チードルも撃たれた直後に、近づいてくる車のランプによって顔を明るく照らされている。これはまるで混沌とした現世からの解放のように映る。

対してリチャード・ギアは五体満足で生還しただけでなく、称賛されるべき善行をもどうにかやり遂げた。にもかかわらず、カメラの前に歩み寄ってくる彼の最後の顔は全く晴れやかでない。それどころか周囲への警戒と緊張に強張った表情とさえ思われる。それもそのはずだ。彼は今後も映画内の混沌と共に生きてゆかねばならないのだから。

つまり、彼はこの負に満ちた世界と闘争する決意を表情に込めて、救急車の横からカメラ手前に1カットで毅然と歩いてくるのだ。彼の顔に光が指すのがいつになるかは誰にも分からない。なんとも重苦しい結末だ。
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