ハリウッドが巨額を投じて描いた、イエス・キリストの生涯。監督はジョージ・スティーブンス。三時間半の歴史大作。
ゆったりしたテンポで最初は退屈だったけど、中盤イエスが民衆のなかで突出した存在になってくるあたりから、スペクタクル的にもりあがってくる。
ベルイマンの作品で知られるスウェーデンの名優マックス・フォン・シドーが青い瞳のイエスを演じていて、説得力がある(「アラビアのロレンス」を演じたときのピーター・オトゥールとよく似ている)。
新約聖書について、ある程度の基本的な知識がないと楽しめないが、山上の垂訓、最後の晩餐、ユダの裏切り、など有名な場面が出てくるので、なかなか興奮する。
この作品「原典に忠実な映画化」などとよく記されているけれど、新約の福音書はもともと、寓意性が強く、解釈もいろいろある。この映画でも、荒野で悪魔と対話するシーンとか、ユダの裏切りのシーンなどに、独自の(現代的な)解釈が見られる。
へんてこな特撮をつかっていないのが、いま見てもあまり古さを感じない理由なのかもしれない。ともあれ映画黄金期にハリウッドが全力で作ったものなので、群衆シーン(モブシーン)などには、いまの映画に出せない迫力がある。