シズヲ

赤い河のシズヲのレビュー・感想・評価

赤い河(1948年製作の映画)
4.7
西部開拓時代におけるカウボーイ達の旅路を描いた映画。この作品の魅力は何と言ってもカウボーイが牧牛を連れていくキャトルドライブの描写そのもので、牛の大群が荒野を移動する光景がとんでもない迫力を持っている。とにかく画面の至るところで牛が蠢いている映像の立体感は尋常じゃないし、それを撮影していること自体が凄い。「スタンピード!」の場面も最早アクションシーンと言っても差し支えがないレベルの躍動感だ。

映画から滲み出る旅の空気感も秀逸。カウボーイ達が徐々に疲弊していく様子も勿論ながら、貧相な食事に不満を垂れたり幌馬車隊と宴を楽しんだりと旅そのものにリアルな生活感が伴っているのがグッと来る。食事係のウォルター・ブレナンの存在など、適度にユーモラスな場面を描いているのも作品自体の人間味を補強していて好き。おかげで「その時代に生きる人間の生活」とでも言うべき生々しさを物語が纏っている。

旅路の様子だけでなく、ジョン・ウェインとモンゴメリー・クリフトの対比構図で引っ張るのもグッと来る。ウェイン演じるダンソンのバックボーンの描写は若干淡白に描きすぎているきらいもあるけど、ヒロイン的存在のミレーの登場で「冒頭におけるダンソンと恋人の離別」が更なる意味を持つのが面白い。そこから「ダンソンとマットの関係性」「マットとミレーのロマンス」に焦点を当ててラストの展開へと収束していく流れも良い。
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