緑雨

一枚のハガキの緑雨のレビュー・感想・評価

一枚のハガキ(2010年製作の映画)
3.0
大竹しのぶの凄味には感服するが、それだけが突出していて全体としてバランスを欠いているような気もする。
六平直政を真に愛していたように思える大竹が、再婚相手である弟大地泰仁に対して抱く感情が如何なるものであるのか、その部分の表現がやや混乱しているように思える。どことなく映画の感情に乗りきれないのはそのせいもあるかもしれない。

大杉漣の出てくるパートは丸々要らないように思えるが、龍の神楽を大蛇退治に見立てるシーンの前衛性は悪くない。

とはいえ、何よりオープニングの天理教施設での緊迫感をはじめ、戦争を直に体験した人間にしか撮り得ない「本物」さ、メッセージの真摯さには率直に感動せざるを得ない。戦友の屍を想いながら生き永らえ、98歳でこの作品を撮り、100歳で大往生を遂げた存在の重さを前にして言葉は出てこない。
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