2人の男女がウィーンを歩きながら一晩中しゃべりつづけるだけの映画。プロットにもなりえない無駄話は、意味のないことの積み重ねのように思えるのだけれど、人がなんとかお互いを理解し合おうとする瞬間の美しさを、ここまで見事に捉えた作品はちょっとほかに思いつかない。魔法は、その関係性の中にだけ宿るのである。
どうしたって涙ぐんでしまう、2人でレコードを聴くシークエンスのすばらしさ。カットが変わり、「beautiful」とだけつぶやくイーサン・ホークに気持ちがシンクロする。青春映画としてもあまりに美しく完結していて、ゆえにこの先を描いた2つの続編を観るのがちょっとこわいのですが。