列車の中で出会い、翌朝別れるまでの男女の恋模様を生き生きと描いたラブ・ストーリー。
監督は長編第三作目の本作が日本初公開となるリチャード・リンクレイターで、原案と脚本も担当。
撮影はリー・ダニエル。
ベルリン国際映画祭銀熊賞 (監督賞) 受賞。
原題: Before Sunrise
(1995、102分)
ハンガリーのブダペストからパリへと向かう列車の中で、ヨーロッパを旅行中のアメリカ人青年ジェシー/ジェイムス(イーサン・ホーク)は、パリのソルボンヌ大学へ通うフランス娘セリーヌ(ジュリー・デルピー)と出会う。
意気投合した2人はジェシーの目的地であるウィーンで下車し、ジェシーの帰国便が出発する明朝までの残り14時間、街をぶらぶらすることに。
カフェ、教会、大観覧車、河畔、酒場、公園などを巡りながら、二人は夜通し語り合い、惹かれ合っていく…。
「これは未来からのタイムトラベルだ。失われたものを探す旅なんだ」
「誰も知らない死に憧れてるの。昔から思ってた。死んだことを知らなければ生きてるのと同じ。想像で生きるの」
「人物が背景に溶け込む感じが好き。見て。周囲の方が人物より強いの。人間は移ろいやすいわ」
「もし神がいるなら、人の心の中じゃない。人と人の間のわずかなすき間にいる。この世に魔法があるなら、それは人が何かを分かち合おうとすること。たとえ心が通じ合わなくてもかまわない。努力することが大事」
「あなたはどんなカップルでも数年たてば先が読めて互いに飽きてくると言ったでしょ。私はその反対よ。相手の全てを知って大好きになるの。…それが本当の愛よ」
物語は二人の会話を中心に展開される。
止めどなく会話を続けることができるのも才能で、羨ましい限りです。
イーサン・ホークとジュリー・デルピーが、お互いに惹かれ合っていく心をうまく表現していて、なかなかよい。
ウイーンの街並みや風景を写すカメラも美しい。
その後二人がどうなるかは2本の続編(「ビフォア・サンセット」と「ビフォア・ミッドナイト」)で確認しよう。
二人がレコード店の試聴室で聴くムーディで印象的な曲はケイス・ブルームの"Come Here"
エンディングはキャシー・マッカーティ/Kathy McCartyの"Living Life"
なお、詩はDavid Jewelの"DELUSION ANGLE"と
W.H.オーデン/Wystan Hugh Audenの"AS I WALKED OUT ONE EVENING"が引用されている。