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ポケットの中の握り拳のasayowaiのレビュー・感想・評価

ポケットの中の握り拳(1965年製作の映画)
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長編デビュー作らしい大胆不適さとケレン味がある野心作。いわゆるテレビドラマ的なわかりやすい演出(貶す意図なし)がなくとも人間の情緒をなんなく伝えてしまうあたりがとてつもない才能である。母の死後、部屋の家具を次々と投げすてるシーンの爽快さと盲目の母を断崖から突き落とす残酷さが両立する不思議な感覚。無自覚にアレッサンドロ的ななにかを観客にすりこんでしまう。なにより好ましく感じるのはまじめ腐った反権威ではなく、軽く笑えるユーモアが備わっているところ。アレッサンドロ(ルー・カステル)がジュリア(パオラ・ピタゴラ)に自分の買った娼婦を見せるシーン、無邪気に振り返るジュリアの表情がいい。ベロッキオ26歳のときの作品。不幸なことに現在同い年なので暗い気持ちに。
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