『殺し屋ネルソン』はミッキー・ルーニーでなければいけないし『白熱』はジェームズ・キャグニーでなくてはいけない。ノワールにしては尺長めのようだけどずっとテンションが途切れないし、なによりキャグニーの人物造形が素晴らしく魅力的で、キャグニーに絡む人物との展開が彼の性質に巧く絡んでくる脚本もいい。
キャグニーとその母ちゃんは母子共依存、いわゆるマザコンで、母ちゃんは知性派のグリサム・マー(a.k.a.『傷だらけの挽歌』)という感じで最高です。時速30㎞で車3台の尾行を捲くし、平気でキャグニーに悪事の教唆をする。この母ちゃんがとてもよいのでもっと活躍させてほしかった。
キャグニーにはたびたび頭痛に見舞われる発作があり、非情な行動から仲間にも異常扱いされていて、母ちゃん以外の人間を信用してなくて妻のことも信用してない。妻もやっぱりNo.2と駆け落ちしようとして、でも刑務所内で女房のようにたびたびキャグニーを守ってくれたエドワード・オブライエン演ずる受刑者仲間を信用するようになったら実は、というくだりが何だかすごい哀れになる。ラストにふさわしい舞台で最後まで悲しき悪を貫くキャグニーの姿も決まりまくっている。ラオール・ウォルシュいいな。