びたみん

泥の河のびたみんのレビュー・感想・評価

泥の河(1981年製作の映画)
3.8
小栗康平監督作品。

初監督作品、自主制作とは思えない風格の完成度で、面白かった。
子供が体験するある種のイニシエーション、別れ、と戦後の日本の環境や状況の克明な記録、としてとてもうまくまとめ上げられている。

なにより80年代制作ながら、50年代の日本をここまで再現したのが凄い。ロケーションや風土の再現もとても完成度が高く、その世界観にのめり込んでしまう。
日本映画的な湿度の高い世界観でありつつも、画角や構図、カメラはどこまでも冷静。その対比も面白い。

ただ、悲痛で心苦しいエピソードがただただ連続するのでちょっと今観ると面白みに欠ける部分もある。

完成度の高い映画だが、もっと映画的な遊びや余白を求めてしまった。
ただ小栗康平作品の他の作品を調べてみるとなかなかアグレッシブで実験的な映画が多そうので、今後色々観ていきたい。
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