ざわゾンビ

泥の河のざわゾンビのレビュー・感想・評価

泥の河(1981年製作の映画)
4.1
戦後の大阪に生きる家族の情景と、そこに流れ着いた家船(えぶね)で生活する一家の交流を描いた作品です。

きんつば、かき氷、ラムネに黒砂糖。
いいなぁこの辺のノスタルジー。

小学生の息子を見守る田村高廣演じる父親の目や表情の静かな、でも、確かな演技がほんまにステキ。
オーバーリアクションこそ名演!とでも思っていそうな現代の役者達を並べて端から引っ叩きたくなるぐらいステキ。

河のほとりで旦那とうどん屋を営み、雰囲気からもう包容力に溢れちゃってる藤田弓子と、その夫婦の息子で、まるっこいのぶお。
対岸に船を留め、そこで生活を始める圧倒的な美貌の娼婦の加賀まりこと、痩せこけた銀子、きっちゃんの姉弟。
この辺もいい対比ですね。

僕には河やその周辺地域を怖がる愛知出身のツレがいるんですが、なんやかその理由も少しわかるようなアングラ感がこの作品でも表出しており、これらは今でも各所でその匂いを僅かに放ちながら残っているんでしょう。
普通に整備された通りとは違いますよね。
ひとつ階層を落とす感じ。

終盤でのぶお自身が住まい、感じている世界と、親友となったきっちゃんの世界の乖離に悩むものの、本当に楽しかった一夏の夢の様な体験を彼自身が肯定し、それを伝えようと駆け出すラストは展開からカットまで、すべてが印象的でした。

また一つ、グレイトムービーを見る事が出来、感謝感謝です。