泥の河の作品情報・感想・評価

「泥の河」に投稿された感想・評価

戦後の大阪に生きる家族の情景と、そこに流れ着いた家船(えぶね)で生活する一家の交流を描いた作品です。

きんつば、かき氷、ラムネに黒砂糖。
いいなぁこの辺のノスタルジー。

小学生の息子を見守る田村高廣演じる父親の目や表情の静かな、でも、確かな演技がほんまにステキ。
オーバーリアクションこそ名演!とでも思っていそうな現代の役者達を並べて端から引っ叩きたくなるぐらいステキ。

河のほとりで旦那とうどん屋を営み、雰囲気からもう包容力に溢れちゃってる藤田弓子と、その夫婦の息子で、まるっこいのぶお。
対岸に船を留め、そこで生活を始める圧倒的な美貌の娼婦の加賀まりこと、痩せこけた銀子、きっちゃんの姉弟。
この辺もいい対比ですね。

僕には河やその周辺地域を怖がる愛知出身のツレがいるんですが、なんやかその理由も少しわかるようなアングラ感がこの作品でも表出しており、これらは今でも各所でその匂いを僅かに放ちながら残っているんでしょう。
普通に整備された通りとは違いますよね。
ひとつ階層を落とす感じ。

終盤でのぶお自身が住まい、感じている世界と、親友となったきっちゃんの世界の乖離に悩むものの、本当に楽しかった一夏の夢の様な体験を彼自身が肯定し、それを伝えようと駆け出すラストは展開からカットまで、すべてが印象的でした。

また一つ、グレイトムービーを見る事が出来、感謝感謝です。
ルー

ルーの感想・評価

5.0
宮本輝の原作も映画も大変に素晴らしい作品です.
日本アカデミー賞、毎日映画コンクール、ブルーリボン賞、モスクワ国際映画祭、そしてキネマ旬報一位の作品.
信雄と喜一の友情が良い.
田村高廣が 40 歳過ぎて授かった大事に育てられた信雄と、生活のどん底にいる喜一と銀子.
藤田弓子の優しい母心.
マジックが得意で信雄思いの父親、田村高廣ですら、舞鶴に女性がいる.
美しいが生きる気力を無くした加賀まりこ.
お米は温いと言う銀子.
亡き父親から教えられた軍歌が上手な喜一.
切なすぎる物語.
喜一が生きた蟹を焼くシーン.
喜一を思うと、実話でなくても涙が止まりません.
モノクロで古い戦後作品に思いますが、1981 年の作品です.
切ない話。お祭りに行くというので、特別にお駄賃をもらって・・・というシーン。泣けてくる。小栗康平恐るべし。大人になってからも何回か見てるけど、そのたびにもう泣きっぱなし。田村高廣、藤田弓子がいい。そして、加賀まりこ。神がかり的な美しさ。
今の若い人は、もしかしたらこの映画を「東京物語」あたりと同時代の「古い」映画と思っているかもしれないが、そんなことはない。1981年公開だから今から見れば「古い」んんだけど、スターウォーズ(1977年)よりあとの作品。つまり、1955年頃を舞台にした1981年公開の映画です。老婆心ながら。
タマキ

タマキの感想・評価

3.8
喜怒哀楽が入り交じった複雑な描写がなんとも言えなく好き
加賀まりこが美しい
こういう内向の世代的な話はなんか良い
午前10時の映画祭
ちろる

ちろるの感想・評価

4.8
派手な演出は1つもなくて、際立ったドラマチックな展開もなくて、でも終わった頃にはとめどなく涙が溢れてくる。

モノクロなのではっきり分からないのだけど、灰色か緑の薄汚れた川と、そこにかかる大きな橋、煙の匂いが立ち込める夏祭りと花火など、日本映画ならではのテイストを多く含んだ秀作なのではないかと思うし、華やかなハリウッド作品はそれはそれで素敵だけだどこういう作品に出会うと日本人でよかったと思うのだ。
主人公ののぶちゃんの家も決して裕福とは言えない、うどん屋であるが、川を隔てて向こう側の船に住むきっちゃんたちとはとうしても超えられない壁がある。
だけどと子どもにはそんなことは関係ない。
遊びたいから遊ぶし、一緒に居たいから家に連れて行きたいしご飯たべたりしたい。
ただそれだけなのだ。
しかしどうにもならない残酷な現実はどうしたってつきまとう。
子供からみるショッキングな世界は建設的に考えることはできるはずもなく、ただ強烈にその印象だけがずっと脳裏にこびりつくのだろう。
また、決して見せたくなかった姿をのぶちゃんに見られた時の加賀まりこ演じるきっちゃん母のこぼれ落ちそうな茫然とした瞳も忘れられない。

せっちゃんがのぶちゃん母との入浴のシーンではじめて声を出して笑う。
何気ない微笑ましいシーンなのだけど、
きっちゃんの「姉ちゃん笑ろうとるなぁー」にどれだけの彼らの我慢が隠されているかと思うと涙を拭わずにはいられない。

流されるように遠ざかるきっちゃんの船にうまく声をかける事ができず、何をするべきなのかも心の収集がつかないままどうしてもぽっかりとあいた穴が多分一生埋まる事が無いのだと知る虚しさがじわじわとこちらにも伝染して、なんとも言い難い哀愁だけが後引く名作でした。
加賀まりこ・・暗くてイイ
小説もいい。
Toshiya

Toshiyaの感想・評価

5.0
終戦から十数年、平和を取り戻した日常の中にはまだ戦争の傷痕が深く残る。
子どもの目線、父親の目線、母親の目線‥‥
'もはや戦後ではない'と言われたこの時代、ひとつの家族を通して描かれる日本の"戦後"は教科書に載らない一面を描く。
田村高廣演じる父親が素晴らしい。
こんなに優しく力強く、弱さも見せる父親はあまり見ない気がする。
>|