ろ

カイロの紫のバラのろのレビュー・感想・評価

カイロの紫のバラ(1985年製作の映画)
5.0

チケットとポップコーンを買って、席に着く。
映画の幕が上がる。あの高揚感。
ミアファローの大きな瞳はさらに見開いて、キラキラと輝く。
ステキな登場人物、衣装、セリフ。
一つ一つにときめいて、その一時だけの夢を見る。
映画は私たちを別世界に誘ってくれる。


わたしはウツになってすぐの頃、毎日テレビにかじりついていました。海外ドラマや映画を一日に3,4本観て、感想を書く。その繰り返し。とにかくイヤな記憶と現実から逃げたかった。

この物語の主人公シシリアも同じ。
不景気の世の中、遊んでばかりの亭主にこき使われ、仕事もクビになる。これからもずっとこの生活が続くのかと思うと、本当に途方に暮れる思いだっただろう。

そんな現実から逃れたいシシリアも映画が大好き。
近所の映画館で上映された「カイロの紫のバラ」が気に入り、5回も観に行く。あるとき、その映画に出てくる冒険家のトムがシシリアに語りかけ、スクリーンから出てきてしまう。


上流階級の人々。
優雅に世界中を旅し、豪華な衣装を身にまとう。
貧しいシシリアにはとても出来ない暮らし。
でも、トムが目の前に現れたことで、その理想の世界に少しだけ手が届いたような気持ちになる。

寂れた遊園地、動かない観覧車の下でトムは言う。
「君を愛しちゃったよ。スクリーンから抜け出すほど惚れてる」


トムとシシリアがデートを楽しんでいると、トムを演じた俳優ギルが現れる。トムをスクリーンの中に戻すためにやって来たギルだが、次第にシシリアに惹かれていく。

ギルとシシリアが楽器屋さんでセッションする場面。
ギルが出演した映画のセリフを完璧に覚えていたシシリア。二人は映画の1シーンを再現する。
この場面、本当にロマンティックで素敵なんです!映画好きなら誰もが憧れるんじゃないかな。


「夢には惹かれても、現実を選ぶしかないの」
はたして、シシリアは幸せになれるのか?


「トップハット」のラストシーン。
ロジャースとアステアさんのダンスを見つめるシシリア。
"Cheek to Cheek"の優しいメロディが彼女を包み込みます。
ろ