樽の外のアンティステネス

カイロの紫のバラの樽の外のアンティステネスのレビュー・感想・評価

カイロの紫のバラ(1985年製作の映画)
5.0
自宅鑑賞。
映画のはじまりとおわりに映し出されるミア・ファロー演じるセシリアの表情、これがこの映画をどんな言葉よりも物語っている。

結局ウディ・アレンという人間にとって、映画の世界を作るというのは、このフェアでない汚れた世界で何とか生きていくための手段なのかもしれない。彼のほとんどの作品内て主人公は、ここではないどこかを憧れ続け、それがどのような結末を迎えようともその憧れがある限り、生きていく事を選ぶ。それは他ならぬ監督自身の人生観なのだろう。

その彼がまさに映画を題材に撮ったこの作品では、映画内の映画でも第4の壁を容易く破り、そこで語られる台詞がスクリーン2枚を通して我々へ向けられたりしているのは、名手の最上級の遊び心(デップー風に言うと"4の二乗で…16の壁!?")。
でもそういった技術もあくまでデコレーションであり、この上なく実直な映画愛を謳う、素晴らしい1作。これぞ、映画!!