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ダークナイト ライジングのMASHのレビュー・感想・評価

ダークナイト ライジング(2012年製作の映画)
4.5
前作の『ダークナイト』の影に隠れてしまい、その価値を見逃されていたり人によっては嫌っていたりする作品。確かにツッコミどころ満載で納得のいかない部分も多い。だが、それを凌駕するアクションの規模やヴィランの存在感、そして何より三部作の締めくくりに相応しいテーマを持った傑作だと個人的には思っている。

まず言いたいのはヴィランであるベイン。どうしてもこの三部作だとジョーカーばかりが注目されているが、僕としてはベインを推していきたい。ぶっちゃけ目的があやふやではあるが、そのデザインやトム・ハーディによるカリスマ性、そして肉体でも知性でもバットマンに勝ったという事実。原作だと筋肉モリモリレスラーみたいな見た目なので勘違いされやすいが、ベインは肉体派でもあり知能派でもあるのだ。そこをよく理解しながら、非常に上手いことブラッシュアップしている。そんな彼の最後に流すひとすじの涙には思わず目頭が熱くなってしまう。

僕はそこまで気にならなかったが、それでもやはりなんでこんなに脚本が雑なんだろうとは思う。ブルースがバットマンとして活動を再開する過程とか、ゴッサムが崩壊していく過程とかの大事な部分がすっ飛ばされている。また、『ダークナイト』以降ゴッサムの犯罪は少なくなったというのにも関わらず、ヴィランの目的がラーズ・アル・グールの目的を達成することという矛盾。ラーズの目的は「犯罪の温床であるゴッサムは他に悪影響を及ぼす前に消さなければ」じゃなかった?今の犯罪が少なくなってるんだから滅ぼす必要なくない?そして何よりオチのためだけに用意されたキャラと発電機の存在。あのキャラは本当に許せない…

とは言いつつも、そもそも前2作とは大きくテーマが違うのだと思う。『ビギンズ』はブルースの物語でありバットマンの誕生章。『ダークナイト』はバットマンの物語であり、そして正義と悪の境界線を描いていた。そして今作はゴッサム自体の物語であり、人が人に希望を見出していくまでを描いているのだ。今作ではバットマンの描写よりも、キャットウーマン、ゴードン、ブレイクの存在が重要になっている。ゴッサムに住む人々がゴッサムを救おうとする。バットマンはそんな彼らの希望を灯す火なのだ。これはバットマンという存在がヒーローという存在を超えた象徴になっていくまでの物語なのだ。

オチは気に入らないものの、エンディング自体は過去最高に好きだったりする。映画ではあまり観ることのできないバットマンの終着点というものを観ることができるからだ。彼のつけた灯火は受け継がれ、ブルース、そしてバットマンの物語は終わりを迎える。戦いは続いていくエンドにしなかっただけでも、この映画を評価するに値するだろう。そしてラストシーンでのアルフレッド。彼が見たブルースの姿は本物なのか?ほとんどの人が本物だと答えるかもしれないが、僕はどちらでもいいのだと思っている。それは『インセプション』などと同じように、言うだけ野暮というものなのだ。
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