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ダークナイト ライジングのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ダークナイト ライジング(2012年製作の映画)
4.0
 市民に愛され、英雄視されるハービー・デントの死から8年、弔辞を述べるジェームズ・"ジム"・ゴードン(ゲイリー・オールドマン)は、真実を隠し続けることに嫌気が指していた。だが皮肉にもゴッサム・シティの街はデント法により治安が回復し、ほぼ全ての組織犯罪を根絶した。バットマンに扮しゴッサムの不正と戦ってきたブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)はデントの犯した罪をかぶり、バットマンとしての活動から引退、ウェイン産業の職務からも遠退き、豪邸の一室に引き篭もる日々を送っていた。だがウェイン産業のパーティで、メイドとして忍び込んだセリーナ・カイル(アン・ハサウェイ)は母親の形見のネックレスを盗み、ウェインの部屋に潜入し彼の指紋を採取する。執事のアルフレッド・ペニーワース(マイケル・ケイン)はその事実をきっかけに、8年ぶりに外の世界を見てみないかとブルースに提案する。一方その頃、セリーナに指紋採取を依頼した黒幕であるウェイン産業副社長のジョン・ダゲット(ベン・メンデルソーン)に指紋を渡したセリーナは彼の裏切りに気付き、秘密裏に行動を始める。その頃、レオニード・パヴェル博士(アロン・アブトゥブール)はCIAに身柄を拘束された3人の頭巾の男と出会うが、その内の1人が博士を大胆な方法で誘拐する。地下の組織で悪を働くベイン(トム・ハーディ)の姿に気付いたゴードンだったが計画は失敗。重傷を負ったところを、SWATの一員であるジョン・ブレイク(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)に助けられる。

 クリストファー・ノーランの『ダークナイト』トリロジー・シリーズ完結編。親友と最愛の幼馴染の死を経て、地下に8年間潜り続けた主人公の姿とは正反対に、皮肉にもゴッサム・シティの治安は回復し続けたが、地下の下水道では悪の権化がしっかりと世界崩壊の計画を練っていた。引き篭もるばかりの主人公を再び外の世界に連れ戻すきっかけとなるのは、セリーナ・カイルとウェイン産業で株主を務めるミランダ・テイト(マリオン・コティヤール)という2人の美女に他ならない。前作まで八面六臂の活躍を続けていたゴードンの活躍が前半部分は幾分後退し、代わりに彼の名を受けたジョン・ブレイクが大活躍する。幼少期にバットマンの強さに憧れを抱いた孤児院上がりの少年という曰く付きのジョンの役柄は、同じく孤児院出身の少年の無残な死をきっかけに事件に深く首を突っ込む。一見、母親のマーサや、優しかったレイチェルのように柔和な表情を浮かべる2人の女性のファム・ファタールぶりは、クリストファー・ノーランお得意のフィルム・ノワールの要素をアメコミに移植する。ただ前作のクランク・アップ直後のジョーカー役のヒース・レジャーの死の影響は完結編の出来栄えに暗い影を落とす。中盤バットマンを自発的に動けない環境に追いやってしまったことも、作劇上の問題として指摘し得るが、アメフトの巨大スタジアムが隆起して波打つ映像体験やIMAXフィルム・キャメラを導入したクライマックスのカー・チェイスなどはやはり非常に見応えがある。思えば古い井戸への落下に始まった3部作は様々な落下のイメージに縛られながら、ラストだけは上昇で結ばれる。だがジョーカーのバットマンに対する問いへの答えは、依然として見つかっていない。
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