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ゴダールのマリアのoqmrのレビュー・感想・評価

ゴダールのマリア(1984年製作の映画)
4.5
「カメラがあれば映画はできるが、映画には他の要素もある。それを検証する。」という意図を持って誕生した本作。聖書のなかもっとも有名な逸話のひとつであるマリアの処女懐胎の物語を現代にゴダール風に再生させていくのだが、聖書ではキリストの超人性や唯一性を裏付ける一章でありそのような理解が要求されるが、本作においてゴダールのアレンジをどのように読解するべきかと意気込むこと自体が強靭な睡魔を招き入れることになるというトリックを孕んでいてそれはどのゴダール作品にも与えられる「難解」という断定に観客を誘導するディレンマと言えよう。しかしながら聖書から引用された物語を聖書風に解釈しかしない方々からの批難は当然のことあるが、フラットな視点でゴダール作品群のなかでもピカイチに美しい本作品の神秘的で(男性には嬉しく)エロティックな女性の表象を堪能する余裕が無心論者にはアドバンテージとして与えられているのでありがたくそれを利用しようではないか。
荒々しくクラクションを鳴らして「あなたを祝福します」と言い放った粗野な男性の一言に凝縮されるゴダールの女性(の美しさと神秘)に対する敬意(と同時に畏怖?)がキレッキレのコメディと視覚的センス、詰まる所映画的センスを以って表現された傑作。それにしても80年代のゴダール作品は傑作のオンパレードで素晴らしい。
最後に、『マリアの本』と『こんにちは、マリア』を合わせて『ゴダールのマリア』として登録されているが両作品は(当たり前だが)別々に評価するのが妥当と思われるので分別して登録するように提案したい。(が、実際にfilmarksにメールを送ったりは多分しない)
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