垂直落下式サミング

プライマーの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

プライマー(2004年製作の映画)
4.8
タイムマシンを開発した科学者が、時空のタイムパラドックスが引き起こすトラブルによって運命を変えていく様を描いたタイムリープサスペンス。
サンダンス映画祭で公開されるや否や大絶賛され、審査員賞を受賞するほどの優良映画だ。
本作でタイムマシンを開発したのは、国の研究機関や大資本の巨大企業に属する発明家ではなく、そこらへんにいそうな理系の野心家。ガレージ企業家としての研究者の地道さが見事リアルに反映されている。
粗い映像、低予算ながら、その枠のなかで輝かせてみせるという崇高な精神に満ちた実験的演出をもちいて、アインシュタインの相対性理論から着想を得た物語を妥協なく膨らませつつ、矛盾が生じがちなタイムパラドックス設定に説得力を求めていく、高度に組上がった脚本に唸らされる。
ノーラン映画によくあるような特殊な時間軸構造を扱っているが、大衆作としてのウケをねらっていないぶん、SF的な掘り下げがソリッドに研ぎ澄まされている。
サスペンスのストーリーを追って、示された情報をもとに謎を推理したり展開を予測したりするのとはまた違う。本作では与えられた作業の段取りを見取り図に書き写しながら思考を巡らせるような頭の使い方をするため、常にこの場面の意味を見いだそうと創造的な探究心をくすぐられるのだ。
本作の成功は、巨大資本の映画ではない小規模な作品だからこその試みが見事成果をあげた事例。確実に一定の需要はある隙間産業だ。インディペンデント製作はこうでなければと思える一作。