くわたさん

脳内ニューヨークのくわたさんのレビュー・感想・評価

脳内ニューヨーク(2008年製作の映画)
3.8
ジャケットは明るいイメージだが内容はそうでもない。
主人公の周りの人間にリアリティーがなく、何だか奇妙な感覚に苛まれる。例えば、火事で燃えている家に平然と暮らす女性が登場する。そこにリアリティーは全く感じない。そういう意味で本作はファンタジー作品と言える。
しかし、主人公は現実逃避傾向で人生を迷走、負のイメージが強い。主人公は決して悪い人間ではなく、なぜか物事が悪い方向に行ってしまう。そこに明確な理由は描かれておらず、不自然さを感じる。その根底にあるのは「俺のせいじゃない」という被害者意識。人生うまくいかなくなると、どうしても現実から逃れたいという気持ちになってしまう。何かに没頭するのも現実逃避したい気持ちの表れで、主人公の気持ちも分からないでもないが、マイナスな事でもその現実を受け入れ、前へ進むことが大事なことで、この主人公のような精神状態は危険な感じがする。
この作品を作った脚本家で本作の監督チャーリー・カウフマンは、自分のことを書いているように思えてならない。主人公は彼そのものである。
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