なんだこの映画!!!不思議すぎる!!
ホームレスが老紳士にいきなり200フランもらうところか始まる。それまでうだつのあがらない日々を送ってたとか、徳の高い暮らしをしてたとかの描写は出てこない。急に、もらう。
いつかお金が返せる時が来たなら、自分にではなく教会のテレーズに返すように言う。
そのホームレスも口数少ない紳士であり、(というか映画全体が言葉少なに回想も最低限の絵だけで見せてくるのが実に品がいい!!!)
、早速おしゃれカフェで大好きなワインを頼む。
今までとは違う一日が始まった朝の光。
おもむろに隣席の老人が話しかけてくる。川の下で寝泊りしているくたびれたスーツのホームレスに、引っ越しの仕事を持ちかけ、君は信用できるからと前金まで握らせてくる。
割りのいい単発バイトが入ったくらいなのに、ホームレスは革の財布を買う。なぜ!ちなみにそれまではポケットとくちゃくちゃの茶封筒に全財産を入れている。
逼迫してる身分だけど、普段に比べたらお金がある。
奢られたら2杯目は自分が奢る、といった良識ある振る舞いを保つ。
立て続けに偶然が起こる。昔の友人や元カノと出くわし、レストランで食事をしたり、高級ホテルに泊まったりする。
このあたりから、死ぬ前に見る最後の夢みたいで怖くなってくる。
元恋人とのダンスフロアに窓から差し込む光の色が変わる演出が不思議だった。
そもそも、作中全ての光が素晴らしかった、飲みすぎて店で雑魚寝してよく眠れなかった夜明けの光とか、なぜあんなにノスタルジックに映せるんだ??西日も朝日も思い出が最高に美化されたフィルムみたいだった。
窓の色が変わる演出は意識しただけでも3回あった、これがこの映画の走馬灯のような唯一無二の幻的質感を作っている。
小劇場の無観客上映は、若干のリンチ感、アピチャッポン感(ほんとーに僅かに香るだけ!)
非日常的ストーリーに対して主人公の気持ちがあまり明示されずシュールな選択と羽振りの良さは村上春樹っぽくもあるか?
中盤まで何がテーマなのかどこへ向かうのかさっぱりわからず、美しい映像に見惚れるばかり。
後半は一夜のアバンチュールや卑怯なスリもどきも登場して序盤の印象よりだいぶポップな展開になりかけ、これはこれで楽しい。
ホームレスは何度も日曜のミサに行きお金を返そうとするが、そのたびにお酒を飲みすぎて寝過ごしたり、旧友にあったり、阻む力が働いているかのようにかなわない。
成り行きまかせのお金の使い方をしてるうちにホームレスは再び一文無しに。
するとまたしても最初の老紳士が現れて、金を貸したことなど無かったかのように、初めて会ったかのようにまたお金をくれる。
そこで、これは杜子春だ!と気付く。
居酒屋は雨の日はホームレス達を泊めてくれて一見優しいけど、グラスを一時も乾かせずに酒漬けにしてくるあたりは悪どい商売とも言える。
テレーズを象徴する(?)少女が扉の隙間から見えているカットがあまりに神秘的で亡霊みたいでゾッとした。曖昧な正体に重きを置かないところがファンタジーというか、寓話なのかなんなのか!
両親と重なる深夜の客もめっちゃ良かった。
結末を罰ととるか福音ととるか?
千鳥足を表すかのようなフャフャのクラリネットサントラが最高で、これ曲なのかな?とShazamしたらストラヴィンスキーの3 Pieces For Clarinet Solo - アントニー・ペイ ですって。いい〜
https://youtu.be/9IwmNjtFU8s