黒人青年のホーマーはアリゾナを放浪中に車が故障してある家にたどり着く。
そこには東ドイツから亡命して来たシスター5人が暮らしていた。その中の院長にホーマーは教会を建設してくれないかと頼まれるが…。
主演のシドニー・ポワチエが黒人として初めてアカデミー賞主演賞を受賞した作品。
この時代に黒人が主人公なのに、人種問題に一切触れていないというのが面白かった。
また、教会の建設の作業をするところで世界の中心ともいえるアメリカ人が少数派になっていて、ホーマーが頼りになる人として描かれているのも面白い。
シスターたちと食事をしているシーンと英語を教え始めるシーンなど、ホーマーの人柄が見えて楽しい。
またこの映画のタイトルの「野のユリ」が出てくる、聖書の箇所を言って見つけさせ、自分の気持ちを代弁するところが好き。
状況を表す音楽が絶妙で雰囲気が出ていてよかった。
特に劇中でみんなが歌っていた「エイメン」が耳についた。
宗教がこの映画の話の中心ではあるのだが、決して神を賛美するという感じではない。
宗教を信仰する人々を通して人間の弱さと強さを浮き彫りにさせるといった感じだろうか。
心温まるヒューマンドラマ、とDVDには書いてあったが、というよりは現実的でユーモアを交えて描いたヒューマンドラマに思えた。